表現活動

字書きは依頼者からの細かい要望を不要と考えていて、絵描きは必要と考えている話

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Twitterでにわかに噴出した"表紙"問題。
この記事にアクセス頂いた方の多くは、内容を知っているか騒動を聞き及んでいる方ばかりと思っています。当該記事は削除されしまいましたし、現段階で魚拓のリンクを張るのもどうかと思うのでこの記事でのリンクは差し控えます。

Twitterなどでは主に「字書き側がちゃんと要望を言わないからだ」という結論で執筆者の方が叩かれている状態で、確かにその点については僕も擁護できないなと思っています。

しかし1人の文章家としては同情できる部分もあり、何かと感じるものがある文章でした。「この文章を、個人の問題で片付けるのはいかがなものか」と思う程度には、です。

それくらい字書きの持つ「要望を言う(言われる)」ことへの認識は、絵描きさんとズレていると僕は思っているのです。ですのでこの記事のタイトルは、僭越ながら少し過激な表現にさせて頂きました。

この記事では、1人の字書きでありイラストの発注もしたことがある僕が、字書きの立場からその認識差を語らせて頂こうと思います。

どちらに肯定的否定的ということもありません。
最後まで読んで頂ければ、2つを比較して落とし込むことができる内容です。

また、この記事はあくまで一見解であり、立場による思想を断定するものではありません。「そういうこともある」という認識でお読み頂けますと幸いです。

※なお、この記事では職業同人問わない括りとして、文章を書く者を「字書き」、絵を描く者を「絵描き」という呼称で統一致します。ご了承下さい。

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表現方法による認識の違い

まず初めに、字書きは細かい要望がない方が"書きやすい"と思っている人が多いとします。個人差はあると思いますが、今回はこれを前提に話を進めていきます。

もちろん要望ゼロで「何でも良いから」は一番困るのですが、指定が細かすぎても書き辛いのが文章です。提示してほしいのは「テーマ」と「絶対に必要な内容」と「規定文字数」くらいで、あとは自分で考えて書いた方が楽な人が圧倒的に多いはず。

少なくとも、趣味や同人で活動している字書きの方はほとんどがそうだと思っています。そもそも趣味で文章を書いている場合、「誰かの要望に答えて文章を書く」機会はほぼ存在しないので、考えたこともない人が多いかもしれませんね。

ライティングの仕事などの場合、指示の出し方を理解している方が「見出しやレイアウトを含むその項で書くべき内容」を理路整然と形作ってくれているなら、執筆を楽に進めることができるのは事実です。と言うかそれが一番楽です。

しかし、よく分かっていない人に適当な要望を羅列されると、それを「どう処理して既定の文字数に収めるか」を考えなければならないので、執筆に際して思考負担が倍増します。だから、細かい要望はない方がありがたいと感じる場面も多いです。

ジャンル問わず「文章を書く」ことには、表現できる幅に限りがあります。どんなに突き詰めたところで"単語の組み合わせ"という概念から解放されませんし、万人にとって読みやすい形(基本形)を崩して魅力的な文章にすることも大変難しいです。

その制約下で如何に他人と差別化するのかを考えるのが文章であり、物理的な制約を取り払うことはできません。

そのため、要望を出されすぎると処理が困難な状況に陥る可能性があるだけでなく、自分の作風を出す余白を奪われてしまうことにも繋がります。ですから、できれば根幹に当たる基本情報以外の部分は、こちらで自由に書かせてほしいと思ったりもする。

細かい要望は、自分の色を薄め、面倒臭さを増長させる(ことが多い)ものである。

これが字書きが抱えている要望や指定に対するベーシックな感情であると考えられます。もちろん、相応の報酬があればどれだけ要望があっても問題ない話なんですけどね。

絵は文章よりも圧倒的に表現幅が広い

一方で絵描きさんは、依頼を受ける時に「細かい要望があればあるほど良い」と考える方々だと認識しています。

絵の上手さや表現力というのは無限大に広がるものであり、アニメ絵だけでなく文化的な作品、美術品や芸術品までも含めれば、絵が「1つの規格」に当てはめて考えることができないジャンルであるのは明白です。

個人の表現力や実力の見せ方のバリエーションなども、文章より遥かに細かく、多岐に渡っていると言っていいでしょう。

ですから、絵描きの方は細かい要望がないと、自分であらゆることを考えて作品を生み出さなければなりません。字書きが考えている自由度と絵描きの方が実際に保有している自由度には、恐らく雲泥の差があります。

だから、絵描きの方は他人から依頼されて絵を描く時、選択ミスを極限まで削り取るために、なるべく細かい要望や指定を求めていると今の僕は考えています。

細かい指定が存在していても、それ以外の技術やデザイン力で自分の色を十二分に体現することができる世界です。なので、依頼者側との齟齬が発生しそうな根本的な要素については、できるだけ考えないで済む状態を理想と考えるはずです。

仕事の場合でも、細かい要求を言ってもらえれば「それは追加料金が出ますが」とあらかじめ話しておけるのでトラブルに発展し辛いでしょう。作業開始前に何か言われる方が、後から「やってくれると思ってた」と言われるより何億倍もマシなのはどこの業界でも同様だろうと。

これは僕の経験から考える憶測でしかなく、断定的に語れるものではありません。しかしながら、絵というジャンルの多様性と今回物議を醸した内容を総合して考えると、この結論には一定の理があると思っています。

同人界隈では普通に考えて、字書きが絵描きに依頼をすることの方が圧倒的に多いはずで、字書きは言わば発注者側に回ることがほとんどです。

だからこそ字書きはこういった絵描き側の心理的事情も把握し、自分との考え方の違いを認識する必要があるのだと思います。

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修正が簡単な文化と難しい文化

字書きと絵描きの認識の差にはもう1つ、作業的な大きな違いが影響していると考えられます。

それは「後からの修正が手軽にできるか否か」という点。

今の時代、文章を書き直すのは難しいことではありません。
スマホやPCを持っていれば、書き直しをしたことがないという人は1人もいないと言って過言ではないはず。誰でもできる簡単な行為です。

ですから、字書きはとりあえず自由に書いてみて「良くなかった部分については後から直せば良い」という思考で執筆していることが多いのです。そういう見切り発車なことができるからこそ、細かい指定を不要と考える傾向もあるでしょう。

(…まぁその分軽率に理不尽なリテイクをぶつけられやすいという、どうしようもない欠点もあるのですが)

しかし、絵はそういうわけには行きません。
デジタル化が進んだと言っても、最早巻き戻し不可能という状況はもちろんある(それがどういったものかは僕には分かりませんが…)わけで、後から言われても「全部描き直す以外に修正方法がない」という事態に陥る可能性も十分にあります。

だからこそ絵描きは、後から絶望的な不具合が発生しないよう、相手のイメージをしっかり確認しておきたいと思うはずです。後から「思ってたのと違う」と言われて「知らんがな」としか返せないのは、双方にとって不幸です。クライアント都合で「うるせぇ描き直せ」と一方的に言われた日には地獄でしょう。

思うに字書きは、その辺りの認識が甘いのだと思います。
と言うより「巻き戻しができないクリエイティブな作業を受注する人」にしか痛感できない世界があるとするべきでしょうか。

一般的な日本人は、慎ましく自己主張すべきではないという国民性に縛られていることもあり、自分の意志を伝えることへの抵抗感が大きい人が多いです。

特に同じクリエイティブな現場にいる者同士は「近しい価値観を共有している」と誤解しやすい(実際はジャンルごとに部分部分で著しい差がある)ため、それが無用な軋轢に繋がる恐れもあり得ます。

これは字書きが絵描きを軽んじていると言いたいわけではありません。個人間で依頼の受発注を行う場合、双方への敬意が存在しているやり取りがほとんどだと思っています。

ですが、それをしたことがない人には、100%の実感を持って対応することは不可能なのです。そしてその実感を持っていないと「細かい要望を送ってあげた方が親切だ」と判断するのはかなり難しい現実もあります。

クリエイターのやり取りは、互いが互いを尊重しているはずなのに、何故かどこかで傷付け合ってしまう、または片方が一方的に傷付いてしまうということが起こりやすい文化だとは思います。

ですから、こういった立場の違いの意識差を考えて理解しようと努力することこそ、これからの時代に必要不可欠なものではないかと僕は思っています。

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おわりに

以上のことから「字書きは指定や要望を不要=なるべくするべきではないと考えていて、絵描きは必要=なるべく沢山ほしいと考えている」と言えます。

僕も以前に絵を依頼した時「小さな仕事だからあまり色んなことを言ったら迷惑だろう」と思い「自由で大丈夫です…!」と言ってしまったことがあります。

逆に迷惑だと思うならこそ、資料をしっかり揃えて「この通りでお願いします」と言わなければならなかったのだろうと猛省しております。その経験から僕は、このような価値観を得るに繋がりました。

物議を醸した匿名記事の方も、似たような価値基準で依頼をしてしまっていたのだろうなとは思います。彼女の最も大きなミスを指摘するとすれば、それを改善するコミュニケーションから逃げてしまったことでしょう。

字書きは「あんまり要望つけたら迷惑なはず」と本気で思っております。故に、この記事に賛同頂ける絵描きさん方も、字書きに「言われない方が迷惑だ」と必要に応じてお伝え頂けると、互いに安心してコミュニケーションが取れるかと思われます。よろしくお願いします。

最後に繰り返しとなりますが、この記事はあくまで一見解であり、当てはまらない人ももちろんいると思われます。逆に「相互常識だぞ」という方もいるかもしれません。

ですからどのような反応を得られるかはj分かりませんし、何の反応もないかもしれません。ですが、もしこの記事が何かしら物議を醸したとすれば、それが字書きと絵描きの間の価値観の差がより色濃く語られる一機会になってほしいと思います。

ネットのおかげで様々なクリエイターが日の目を浴びる時代になりました。それぞれが人ができないことができる素晴らしい人材達です。

そんな尊敬し合うクリエイター同士の不必要ないざこざが1つでも減ることを祈り、この記事を書かせて頂きました。何かのお役に立ちましたら幸いです。

長々とお読み頂きありがとうございました。願わくば、またどこかでお会い致しましょう。

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