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指示語や代名詞の乱用は文章を読みづらくする 読者目線に立った適切な使い方とは

投稿日:2020年3月14日 更新日:

「この」「あの」「その」「彼」「彼女」

指示語や代名詞は文章を書く上で無くてはならないものです。同じ名詞を連続で使うと文章のリズムも悪くなり、視覚的にも見づらくなりますから。

しかし、執筆時に文章を読みづらくしてしまうのもまた指示語や代名詞です。便利な言い回しですが、それ故に使い方を誤ると文章を崩壊させてしまうリスクがあるのです。

僕自身、後から自分の文章を読み返すと「なんだこれ?」と思ってしまうこともしばしば。書いている時はそれで問題ないと思っていても、読み手目線に立つことで読みづらい文章だったことに気付きます。

読み手と書き手の間にある認識の齟齬、指示語や代名詞の使い方に存在する落とし穴を、分かりやすくまとめて行きましょう。

指示語を使う理由

指示語の理解と言うと、やはり学生時代に受けた国語のテストを思い出す方が多いのではないでしょうか?

国語のテストでは「文中の"その"は何を指すか?」といった問題が出題されることは多く、誰もが一度は解いた経験があると思います。このような問題をしっかり解いてきた人達には一定の読解力が身に付いており、指示語の中身を間違うことなく理解することができます。

よって書き手はその読み手の読解力を信じて指示語を活用し、見た目に読みやすい文章を書くことを最大の課題の1つとして執筆しています。

だから文中の指示語の意味を違える人がいたとしても、7~8割の人が正しく読めているのであれば、書き手は読み間違いを読み手の読解力の責任にしてしまうことも可能です。「理解できない方が悪い」と一蹴するのにも正当性がないことはないのです。

自分は多くの人に理解できる文章を書いているのだから問題はない。文章も書き慣れてくると、そういった指標で自己評価を付けがちになります。

ですが、より良い文章を書くためには「理解できることと読みやすいことは違う」と考える必要があります。その意識が読者目線の文章を育てます。

理解できるけれど読みづらい。
そのような問題を引き起こす原因となるのが、指示語や代名詞なのです。

読み手に負担を強いる文章

指示語や代名詞を使う時に最も気を付けなければならないことは、書いている自分の頭の中は100%整理できてしまっているということです。

「この」「あの」「その」と、何かを指し示す単語を利用する際、書いている本人は何を指しているかを明確に理解して書いています。その指示語が何を指しているかを間違えることは絶対にあり得ません。

しかし読み手の立場に立つとどうでしょう?
読み手は文章を読んでいる時、筆者が何を言いたいのか、何を言おうとしているのかを知らないまま読み進めます。すると、指示語や代名詞が登場するたびに、読み手は「これは何を指すのか?」を考えなければなりません。

その指示語や代名詞を指す可能性があるもの(便宜上AとB)が直前に2つ以上存在する場合、読み手はどちらを指しているのかを判断するのに一瞬の思考を要します。それがほぼ間違いなくAだと分かる内容だとしても、考えずに読むわけにはいきません。

指示語や代名詞を多用することは、この思考負担を読み手に強いることに繋がります。1つ1つは些細なもの・理解できるものでも、文中に幾つも断定的ではない指示語が登場する文章は、読んでいる側に小さな負担を積み重ねて行きます。

つまり指示語や代名詞の多様によって、読み手を疲れさせる文章になってしまうかもしれないのです。

そして文章は内容を理解するために読むものであり、その理解に集中できるように仕立てられているのが良い文章です。余計なところの思考負担を増加させる表現はできる限り排除して行かなければなりません。

なので、指示語を思うままに多用している文章は「理解はできるけれど読みづらい」と思われやすいですし、その文章(書き手)を何度も読もうと思う人を確実に減らします。

せっかく良い内容を書いていても、書き方の問題のせいで100%の評価を得られない。そのようなことは、発信者であれば絶対に避けて行きたいところです。

読み手の目線に立って考える

書き手は頭の中で内容を理解して指示語や代名詞を使ってしまうが故に、真の意味で読者目線に立って考えることができません。自分で読み直しても、全く問題がない文章に見えてしまいます。

そういった齟齬を少なくするために、書き手には編集や校正といったパートナーが必要なのですが、個人メディアやSNSでの発信の場合は自分で全て解決して行かなければなりません。

文章を書いている(書き終わった)時、可能な限り文中の指示語や代名詞を1つずつチェックして行き、それが本当に読者に分かりやすい使い方をされているかを考えてみる。それを積み重ねることで、自然と読者目線に立った指示語の使い方が身に付いて行きます。

これはTwitterやInstagramのような短文投稿にも応用できるテクニックです。むしろ短文をチェックすることから始めることで、少しずつ伝わりやすい文章を書くことができるようになるはずです。

例えば僕は書き終わった後の自分の文章を読み返し、指示語の前の内容が的確に拾えるかをチェックしています。また作品の感想など、人名が短いセンテンスに2名以上登場する場合は、「彼」や「彼女」をあえて使わないように文章を整えています。

この記事をお読みの方も文章を書いた際には、指示語や代名詞を利用したヶ所を1つだけピックアップしてみてください。そしてそれが「本当に文章を読みやすくしているか」と30秒ほど向き合ってみてください。

1つ1つの気配りが積み重なり、新たなところに目が行くようになります。最初は面倒臭いと思いますが、0だったところに1の意識を向けることが大切です。

学生の頃、指示語や代名詞は文章を読みやすくするために用いるものと教わりました。その学びを本当の意味で正しく活用できるよう、意識を育てて行けたら良いですね。

おわりに

指示語や代名詞を多用することで、文章が読みづらくなる理由を解説しました。

僕もこの指示語の多用について自分なりに真剣に向き合えるようになってからは日が浅く、まだまだ完璧とはほど遠い能力で執筆しています。早く確実に読みやすい文章を書けるよう、精進を重ねて行く所存です。

ここまでこの記事を読んで頂けた方は、恐らく読みやすい文章の書き方に関心があるのでしょう。共に早く確実に読みやすい文章を書けるよう、研鑽を積んで行ければと思います。

この記事がその一助となりましたら幸いです。

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