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『キンプリSSS』4話感想 数値化のその先へ! 十王院"カケル"の目指す愛

投稿日:2019年3月25日 更新日:

最新作劇場版&TVアニメシリーズ
KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』公開記念!

『キンプリSSS』『スッスッス』の感想記事。
最速上映参加の勢いで1話ずつガッツリと。

4話は十王院財閥の御曹司 十王院カケル!

カケルと言えばやはり取り巻く環境の複雑さと、それを覆い隠すような(表面的には)軽い性格が売りとなっていたキャラクター。プリズムショーシーンこそないものの、『キンプラ』では裏でヒロをキングに導く立役者になったりと、他のメンバーとは一味違った活躍を見せてくれた彼でした。

そして複雑なお家事情の渦中にいるという点では、やはり1章で魅せてくれたユキノジョウと双璧を成す存在というところでしょうか。

芸能という固着した価値観に束縛されるユキノジョウの複雑さと違い、ビジネスという多様性の渦中で立ち回らなければならない複雑さを抱えた男の子だったと思います。それ故に、何となくどのような話が展開されるかは想像できるが、それがどういう方向を向くかは全く分からないキャラの1人でした。

4話はそんな彼らしい、解釈の多様性を残した物語に仕上がっていたと思います。今回もネタバレ有りでバッチリと書かせて頂きます。よろしければお付き合いくださいませ!行っちゃうよーん!

これまでの十王院カケル

エーデルローズのメンバーでありながら、十王院財閥の御曹司。若干16歳で既に役員まで勤める超敏腕高校生ビジネスマンの肩書を持つ彼。初作では執行役員として出資先であるシュワルツローズの制服を身に纏い視察に行くなど、公私をしっかりと使い分けられる一枚岩ではないキャラクター性を覗かせていたのが印象的でした。

『キンプラ』では自身が総指揮を取っていたP.R.I.S.M.システムを別会社と提携させる大胆な経営戦略でエーデルローズの危機を救い、常務の真田を出し抜き仁の思惑を破綻させるなど陰のヒーローとして活躍。その姿や行いを誰に伝えるでもなく、真田の悪行を白日の下に晒すこともなく、何事もなかったかのようにエーデルローズの十王院カケルに徹し続ける器の大きさを見せてくれたのでした。

しかし前作までではその仕事ぶりを見ることは多くあっても、実はプリズムスタァとして何かに挑戦している姿を見ることはほとんどなかった。何故プリズムスタァを目指し始めたのかもよく分からないキャラでした。

オーソドックスに考えれば、仕事ではない自分でいられる場所としてエーデルローズにいるのだろうと推察されるのが普通なキャラクター。今回初めてのプリズムショーに挑戦するに当たって、その辺りの理由がどう描かれるかが『スッスッス』に期待されるところの1つだったかと思います。

雰囲気は見えるが先が読めないカケル回。そのシナリオを語っていきます。

社会人ドラマ風で勢いのあるシナリオ

開幕半沢直樹パロからの池井戸ナレーションが炸裂し「やりがったな菱田」感が凄まじいスタートでした。「10倍返しにしてくれるゥ!!」それお前が言うのかよと誰もが思ったんじゃないだろうか。
(追記:これ4話の台詞じゃなかったですね…)

しかしながら池井戸潤作品のドラマ化に際して欠かせないあのナレーションには「難しいビジネス用語を上手いこと作品に落とし込む力」があると考えられます。別に聞いていてもいなくても作品を楽しむ上では大して重要ではないが、作品を理解する上ではなくてはならない説明を一気に終わらせつつ、その時間を利用して作品の雰囲気を固めるといった効果を持っています。

1キャラ当たり濃く語れる時間が20分強しか存在しない『キンプリSSS』において、こういった内容圧縮技術の活用は必須と言って良く、一般に大きく広まったこの池井戸ナレーション方式を採用するのは確実かつ堅実な方法であると言えます(超好意的な解釈)

これにより、開幕の時点で「あぁカケル回はやっぱりビジネスの話を中心に展開するのか」ということがスッスッスと頭に入ってきたのは言うまでもなく、一瞬で「どんな話をやるんだろう」という疑問を解消して話に没頭させる勢いある形に仕上げてきたと思いました。TVアニメの4話ではなく、1本の映画の始まりとしても鑑賞者の心を作品に集中させる見事な導入だったと言えるでしょう。

常務の真田を出し抜くため『キンプラ』で開発中のP.R.I.S.M.システムを伍友商事と独断で提携させることを選んだカケルは、その事実を真田当人にダシに使われたことで十王院グループ内の派閥争いにおいて窮地に立たされます。

真田はシュワルツローズとの明らかな癒着や一部情報の私的流用がカケルにバレているようですが、そんなことは些細なことと言わんばかりの強気な対応。真田が属する派閥 九曜会の権力が、グループ内で相当に強力なものであることが分かります。

社員を納得させる措置として、マダガスカル支社(マダガスカル支社…?)に出向を命じられたカケルは、大自然の中で十王院グループの一員として働くメリナに出会います。その正体は現地王族の末裔で正式名称ネブカドネザルうんちゃらかんちゃら。とりあえず言語の圧力でゴリ押ししてくる感じ「今回は監督の脚本か」と感じざるを得ないキンプリムーブ。

マダガスカルでカケルを待っていたのは閑古鳥(フラミンゴ)が鳴く動物園。ここでの十王院グループの主たる業務は「天然ガス採掘事業」であり、動物園はその一環で流行りものに便乗して設立された施設でした。

言わば十王院グループにとっては失敗したビジネスであり、負の遺産をカケルは押し付けられたと言ったところでしょうか。その指揮を執っていたのは、カケルが過去にお世話になった児玉元専務、そして採掘作業場では指揮を執るリビングストンとの出会いがありました。ドゥォーモォー!ヨロシクオネガイシマース!

大事を扱いながらも「個人」に重きを置いた語り口

「こんな素晴らしい自然を開発で破壊しちゃって良いのかねぇ…」

都会には全くない雄大な自然を目にしたカケルの何となしの発言。実際、計画上天然ガスが採掘できる保証もない状態のようですから、無駄なことをするより今あるものを活かした方が良いのでは…と軽率に思い至るのは当たり前というもの。

「…カズオ、それは間違ってル」
「それは僕達に貧乏のままでいろってことなんダ」

しかしそれに対し明らかな敵意を向けるメリナ。先進国はそういった綺麗事を弄すことで、自分達の生活を困窮させて搾取を続けている。自分達の生活を良くできればそれで良いと思ってるんだろうとカケルに言い放ちます。ちなみに先進国の生活は、こういった貧しい国から資源を買い叩いているからこそ成立しているという背景は実際にあるようです。

カケルは個人単位で「そんなつもりはない」と言いますが、社会はそれで成り立ってしまっているのが現実。それではメリナの気持ちは動かせません。短い時間でディープな社会問題に切り込む脚本でした。

「世界で一番素晴らしい景色は何か知ってるカ?」
「飛行機から見るTOKYOの夜景だヨ」

カケルからすればあまりに頓狂な回答、驚くのも無理はありません。しかし現地王族であるメリナにとって、研修で行った東京の夜景が恐らく初めて見る先進国の姿だったこと、そしてそれが彼にとって凄まじく大きな価値観の転機になったことも想像に難くありません。

それに「俺だって東京の街で遊び歩きたい」(要約)と熱意のこもった眼差しでカケルに語るメリナは、別にふざけたことを言っているわけではありません。あの光はそこにいる人達の生活や仕事があって生まれるもの。たくさんの人がそこに生きている証なんだとカケルに伝えます。

「光の1つ1つが人の生きる輝きダ」
「僕はこの国を光で溢れた国にしたイ」

それでも決して彼は「東京に住みたい」とは言いませんでした。ただ「この国を東京みたいにしたい。そのためには今はお前達の力を借りるしかないんだ」と、真剣な目で大きな目標を語ります。

それに感化される形でカケルの心も変わって行ったことでしょう。自分にとっては息苦しいだけの都会の街並みや高層ビル群の光も、立場が変われば全く違うものに見える。それを素晴らしいものだと感じる人がいる。自分達の価値観をそういう人達に押し付けてばかりでもいけないんだと、真摯に受け止める彼が見れたと思います。

風呂敷を拡げ大きな社会問題を軸に置きながらも、あくまでそこに息づく「個人の生き様」に重点を置き語り連ねていくところは『プリティーリズム』から続く人間の物語を感じさせてくれる一幕でした。

人の心に触れ、考えを知り、自分の中の価値観を変えて行くことができる。十王院カケルの姿は若くして聡明そのもの。10代半ばにして十王院グループの最年少役員に就任するという実績を持つのも頷ける。しかし彼がそこまで早熟であったのには、彼を取り巻く壮絶な環境も理由の1つとなっていました。

壮絶な生い立ち "愛"を知らない一男

生まれながらにして世界を股にかける大企業の御曹司であった十王院一男の人生は、家庭環境=職場環境とも言うべき苛烈なものでした。

結果が全ての利益主義。正直者が馬鹿を見て、悪人が制度を利用して正義を気取り出世する。社会のしがらみを濃縮したような環境に身を置いていた彼は、幼児期で既に社会の根源的な問題点を理解させられてしまっていたのです。

しがらみに囚われているという点ではユキノジョウと境遇を同じくするのですが、歌舞伎という強制された血の運命の中で可能な限りの幸せと愛を向けようとしている太刀花家に対し、どう見てもビジネスのことしか考えていない母親とビジネスのことしか考えられない(余裕がない)父親(婿養子)に育てられ、ビジネスそのものと言うべき祖父を持つという正に「詰み」のような状態の十王院家。

「仕事は思いやりが大切だよ」
「大きな"愛"で相手を包んであげる」

そんな中で、他人でありながら唯一彼に最大限の「愛」を向けてくれた児玉元専務もまた、真田に謀られ失脚させられてしまいます。真田は児玉が向けてくれた愛を一男の目の前で否定し、勝利を宣言します。それを誰も庇おうとしなかったところをまざまざと見せつけられた一男のショックは如何ほどのものだったでしょうか。一般人の想像を絶する経験だったと言う他ありません。

「これ…きっと助けてくれるよ…」

当時の一男にとってヒーローだったスーパーサラリーマンエースの人形を彼に渡したのは、一男が児玉にできる、彼から受け取った「愛」教わった「愛」への最大限の恩返しだったのでしょう。その後、彼は児玉の意思を引き継ぐかのようにグループの一員となり、史上最年少役員として活躍を開始します。

最初こそ順調であったものの、祖父が病床に臥せったことで権力バランスが崩れ、グループは空中分解の危機に。信じていた美人秘書からハニートラップを仕掛けられるなど、ますます一男は「愛」の存在を信じられなくなってしまいました。

最も身近にいた秘書に裏切られたというだけで考えたくないレベルのショックだったろうに、思春期の少年に対する性的なアプローチともなればその嫌悪感はさらに何倍にも膨れ上がったはず。それは当時様々な謀略を仕掛けられたであろう一男が、真先にこの件を口に出したことからも明らかです。

あまりに壮絶な状況に耐え切れなくなった一男は、ドロップアウトを宣言するため祖父の元を訪れます。そんな重い決断をするには早すぎる歳ですが、十代というのは目の前の経験で全ての世界を考えてしまいがち。極一般的な価値観ではとっくに限界を迎えていておかしくない状況でした。

その一男を出迎えたのは元気なジジイとおっぱい。実は祖父は病気などしておらず、自身が一時的に退くことで起きる争いが十王院をより成長させると踏み、嘘をついていたのです。正にビジネスの権化。でも顔はおっぱいに挟まれている。

「経営は金額で判断するな、ハートで判断しろ」
「一男、決して愛を失ってはいけないぞ」

経営者として真摯に教え説く祖父の発言は、自分に大切なことを教えてくれた児玉さんと重なりました。自分達はお金ではなく、人々を笑顔にしたいという気持ちだけで一生懸命働いてきた。その成果が今の十王院なのだと後継者である一男に語り聞かせます。

一見良いことを言っていますがおっぱい――そのためには内紛を激化させることを辞さない覚悟だったりと、言っていることとやっていることが実際には激しく矛盾しています。やはり十王院万太郎という男が、ビジネス的な辻褄合わせの上でしか「愛」を考えていないのに変わりはありません。

しかし在りし日の児玉を見限り、愛など全く持ち合わせていないように見えていた自身の祖父は、それでいて本質は人間味に溢れた人だったということをこの時一男は初めて知ったのかもしれません。

それは彼にとって1つの救いになったのに間違いはなかったと思います。でもそれぞれが掲げる「愛」の形の違いは、「本当の愛」を求める一男をより混乱させる結果を同時に招いたとも言えるのです。

感情と計算 カケルと一男

個人的な考えでは、一男もまたそんなビジネスの洗礼を受け、既に打算と計算で物事を考える人間になってしまっているのだと思います。

それを決定づけているのが真田常務の存在です。

僕は私怨を優先すれば一男が真田を失脚させるタイミングは幾らでもあったと思うのです。PKCの件も間違いなくそうでした。九曜会の力があったとしても、物的な事実があれば真田個人をどうにかすることくらいはできたでしょう。

ですがカケルはそうしなかった。しかもあろうことか真田はそれをダシにして一男を出向させる手筈を整えてしまっていたのです。それすらも受け容れ、良しとしているように見えました。

これに意味があるとすれば「真田常務が十王院グループにとってまだ必要な存在である」と彼が判断しているということであり、転じて一男が人間性や感情でなくビジネス手腕で相手の存在価値を判断していることに他なりません。聡明であるが故に悲しい現実と言うべきか、悲しい現実があったからこそこの聡明さと言うべきか…。

でもいつか一男として家族と向き合ってほしいし、真田にも引導を渡してやってほしい。感情と計算――カケルと一男の間を突き詰めた彼の姿を絶対に見せてほしいと思っています。

彼がカケルではなく一男として家族と向き合い、感情をむき出しにするシーンは今回見ることができませんでした。僕はその日が来るのを信じて待ちたいと思います。二期はまだか?

余談ですが、天誅ババアが思ったより普通に天誅ババアで安心しました。あのシーン、恐ろしいまでに毒を煮詰めた親族に囲まれたカケルにとって、女を侍らすおじいちゃんの酷い体たらくとそれを取り巻く家族の意外な光景すら癒しであったのかもしれないと感じています。

「自分の家族も何だかんだ人間なんじゃん」と思っていたのかもしれないなぁと。

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