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【ミリしら超感想】『アイナナ Second』第8話 「伝えたいんです!」見守る者 共に歩む者の想い

2020年11月12日

 

https://idolish7.com/aninana/story/second/?p=1244

地獄に次ぐ地獄。
全ての関係性が絡まり合い、抜け出せない負の袋小路に入り込んでしまったIDOLiSH7。

誰もがそれぞれ異なった心の闇を抱えていて。一度生まれてしまったすれ違いは正しく交差することなく、溝は大きく拡がりやがてはねじれて行ってしまうのです。

この状況を変えるには何かキッカケが必要。1つ、たった1つで良い。全てを理解し、刺激し、彼らが正しく交わる筋道を示す。そんな大きなキッカケがあれば、彼らは自分たちの力でまた歩き出すことができるはず。

彼らは1つのグループである前に、1人1人の人間で。それらが全て1つに合わさっているからこそ、"アイドル"がその姿を紡ぎ出せる。果たして彼らは、見失った光の存在に気付くことができるのでしょうか。

そんな希望の在り処を巡る第8話。
彼らの物語を今回も真摯に紐解きます。

Re:valeの決意 IDOLiSH7の苦悩

伝説のアイドル「ゼロ」の楽曲カバーを決め、トップアイドルとしての地位を確かなものにしようと歩むRe:vale。

IDOLiSH7が思い悩み、足踏みをしている間にも世界は動いていく。その中で大先輩として常に輝き続けるRe:valeの存在は、7人にとって(今は全てを受容できないほどに)目映い希望として輝いている。

そのはずでした。
突如として百が歌えなくなってしまう、その時までは。

しかし彼はどう見ても体調不良には見えません。声が出し辛くなると言うよりも、歌声だけが何かの原因で止められてしまっている。百に降りかかった不幸は、見ている者の多くがそのような印象を受ける特殊なものでした。

考えられる理由はただ1つ。ゼロの曲のカバーを決めたことで、彼らに向けられた酷い誹謗中傷の声。それが百の精神に悪影響を与え、歌うことを恐怖するようになってしまった。過去のどこかに、それに順ずるトラウマが存在しているのかもしれません。

看板にスプレーで落書きするほどの過激派が存在するのを見るに、当然それは彼らにも直接の嫌がらせとして届いてしまっているのでしょう。輝かしい栄光を掴み、多くのファンを抱え、人気絶頂の中で更に高みを目指すRe:valeの片翼でも、そんな一部の悪意ある声に抗うことはできないということです。

他人の曲をカバーすることは、それだけで批判の声を受けやすい行動。カバー元が伝説となっている存在ならば尚更のことです。過去のイメージを唯一の至高とする者たちも当然おり、中には勝手な代弁者を気取り出す者がいても不思議ではありません。

カバーする者が人気と実力があるからなど関係ない。むしろ人気と実力があるからこそ、ゼロの崇拝者は新たな存在を忌避します。自分の中の"絶対"が、世間によって塗り替えられてしまうことを恐れるからです。

「千…超イケメン…」
「知ってる」

恐れは危機感を生み出し、危機感は人の心を狂わせる。それだけ彼らが異常な悪意を受けていることは、間違いないと考えて良いのでしょう。

伝播する闇

Re:valeのファンではない他の誰かが、自分の「好き」を理由に彼らを苦しめる。Re:valeの2人もそのことは重々承知した上で、何か大きな信念があって今回のことを決めたはず。それでもやはり、突き立てられるナイフは準備の有無に関係なく、確実に対象の心を抉り取ってしまうのです。

「IDOLiSH7は…何を望まれているんだろう…」

その事実を目の当たりにして、アイナナの7人は何を思ったことでしょう。

「あのRe:valeでも耐えられないのだから…」という甘えでしょうか。それとも「あのRe:valeでさえ耐えられないのに…」という絶望でしょうか。はたまた「これからもっと恐ろしいものと向き合わなければならないなんて…」という恐怖でしょうか。

自分たちが受けている感情よりも、もっと大きく明確な"悪意"。それを向けられて立ち止まる憧れの大先輩の姿は、否応なくアイナナの心の闇を増幅して行きます。

前を向いて頑張ろうという話は一切出せず、堰を切ったかのように後ろ向きな話題ばかりが口をつく。「自分はいらないのではないか」「自分でない方が良いのではないか」「ファンはそれを望んでない」。リーダーたる大和の励ましにも耳を貸さず、本音を吐き出し続けるのです。

まるで「そうだね、だからもうやめよう」と誰かに言ってほしいかのように。闇を抱えた者はその中から顔を出せず、周りさえも同じ場所に引きずり込んでしまいます。

それでも。

彼らは独りで、孤独なアイドルとして戦っているわけではありません。その隣りには、共に同じ道筋を歩いてきた者がいる。彼らをずっと支えてきた者がいる。彼らが何を思い、何を抱えて前に進んできたのか、その全てを見てきた者がいる。

辛い時、苦しい時、どうしようもない現実に苛まれて立ち上がれなくなった時。自分を奮い立たせてくれるのは、"たった1人"の「声」だったりするのかもしれない。

いつもそばに寄り添ってくれていた大事な人の、強くまっすぐな気持ち。それは時として無数の悪意を突き破り、闇に閉ざされた心に一筋の光を照らし出す。

「一億のNOに勝つ、YESを伝えてきます」

成長してきたのは決してアイドルたちだけではありません。隣りにいた彼女も、導き支える者として彼らと共に1歩1歩を歩んできた。もう右も左も分からない、助けられてばかりのマネージャーではないのです。

自信と使命感を持って、小鳥遊紡は走ります。どんな声よりも大きな「声」を伝えるために。自分にしか持てない気持ちを、彼らに届けるために。

小鳥遊紡、叫ぶ

ファンはファンである以上、アイドルの裏側を知り得ない。

目の前にいる彼らを本当の彼らだと信じて、その存在に浸って元気を貰う。そうして熱狂する応援の声が、アイドルたちをより強く大きく輝かせていく。

それがアイドルとファンという関係の現実であり、同時にたった1つの真理であると言えます。"夢"を与える存在は、その"夢"を壊すようなことをしてはいけない。"夢"を受け取る側は、その"夢"の世界を謳歌する権利がある。その前提があってこそ彼らと彼女たちは繋がっています。

だから裏で彼らがしている苦労のことなど彼女たちが知ろうとする必要はなく、彼らはそれを外に伝えようとしてはいけません。客観的に見ると薄情で残酷に見えてしまう光景こそが、彼らがアイドルでいられる由縁。そして多くのファンがそれに熱狂できる理由なのです。

でも、彼らだって「誰にも理解されなくて良い」と思っているわけじゃない。辛く苦しいことがあれば、慮ってくれる人が近くにいてほしい。抱えているものを取っ払って、素の自分で話せる誰かに甘えたい。1人の人間である以上、それは当たり前に誰もが持つ感情でしょう。

彼らはアイドル。人を幸せにする天才。自分に向けられる全ての感情を好悪関係なく受け入れて「皆のために」と考えて動いてしまう、そんな優しさに溢れた少年たちです。

好きも嫌いも、期待も不満も、全て受け止めて走っている。それを嫌だと思っている人は1人としていないはずで。彼らはそれも全て含めてファンの人たちが大好きで、応援してくれる人に恩返しがしたいと思っているに違いありません。

ただ「どうして良いか分からない」「何が正解か分からない」と悩む苦しさは、どんな立場に置かれていても変わらないものだと思います。そうやって惑う人たちに勇気と元気を与え、奮い立たせる仕事をしている彼らもまた、同じように惑うことがある。それだけのことなのです。

そこまで追い詰められても"アイドル"でいようとしてしまう彼らには、無理矢理にでも手を差し伸べて救い出そうとしてくれる人が必要です。

変わるキッカケはほんの一瞬。それが誰もにとって忘れられない時間となる。「頑張ってください」も「頑張らないでください」含めた大事な言葉。それを届けることの意味、届けられることの意味を、彼らと彼女は体現しようとしています。

一億のNOに勝つYES

「――IDOLiSH7が大好きです!」

力強く扉を開けて、息を荒く眼光鋭く。IDOLiSH7のマネージャーは、1人の人間として彼らに"好き"をぶつけて行きます。

「IDOLiSH7は、最高のアイドルです!
私はIDOLiSH7の大ファンです!」

小鳥遊事務所の社員として働き出したあの日、彼女は誰よりも早く7人の輝きを目の当たりにして。決して仕事上のパートナーとしてではなく、まず1人の女性として名無しのアイドルたちの魅力に触れました。

仕事人としての積み重ねがない彼女と、アイドルとしての積み重ねがない彼ら。何もない者同士だったからこそ、彼らはよりアイドルとファンに近い関係から歩み出すことになったのです。

「皆さんの笑顔や、皆さんの歌や、皆さんのダンスのおかげでいつも幸せを貰ってます!ありがとうございます!」

7人のメンバーから人数を絞れと社長に言われても、彼女は7人揃ってのデビューを進言しました。それは紡にとって彼ら全員が同様に魅力的に見えたということ。そして7人揃った時が一番彼らが輝いて見えると、心の底からそう思ったからこその判断でした。

この人たちの輝きはきっと日本中、世界中に響き渡って行く。その確信をもって、紡はマネージャーとしての責務を全うし続けてきました。

「一織さん!一織さんのセンター、大成功です!みんな喜んでくれてます!」

そんな彼女だからこそ届けられる言葉がある。誰か1人じゃない、7人全員を等しく見届けてきた彼女だからこそ、伝えられる想いがあります。

「大和さん!俳優のお仕事もあって忙しいのに、皆さんを支えて下さり、ありがとうございます!」

けれどそれは、彼女1人が見出した魅力ではありません。
彼ら1人1人が努力し、彼らの周りに集まった全ての人たち。皆が可能性を見つけ出してくれたことで、IDOLiSH7は成功への光を得ることができました。

「三月さん!三月さんのおかげで、番組大好評です!"滅茶苦茶"面白いです!」

だから彼女は、単に自分がどう思っているかだけを伝えません。あくまでも「みんながどう思っているか」を意識して、彼女だけが知っているたくさんの人の言葉を心に秘めて。善意の象徴として彼らへの想いを吐露して行きます。

「環さん!スタッフさんみんな褒めてましたよ。環さんが話しやすくなったって!」

今の彼らが、どんな言葉を必要としているのか。誰からのどんな想いに苦悩してしまっているのか。

それをしっかり理解して、把握して。的確な言葉を紡いでいく彼らにとってたった1人のマネージャー。

「壮五さん!困った時にどんなことも対応してくれるって、どの局の人たちも感謝していました!」

全員一緒くたの薄っぺらい言葉ではなく、かと言って長々と飾らせることもなく。ただ1人1人にまっすぐな想いだけを伝えようとする、健気で一生懸命な、それでいて自信満々で頼りになる"最大最高のファン"の言葉。

「ナギさん!ナギさんのハチャメチャな魅力に、スタッフもタレントさんも虜です!」

そして内容以上に、彼女のその優しさと温かさに包まれていく感覚。突然のことに少し面喰らいながらも、それをIDOLiSH7の7人は確かに感じ取ったことと思います。

「陸さん!陸さんの歌声は、世界一です!」

人は誰しも自分の悪いところ、嫌いなところばかりを見てしまうものだから。たった1つの欠点のせいで、自分に向けられる愛まで否定してしまう人だってきっといる。

「色んな形に変化して行っても、陸さんがセンターにいてこそIDOLiSH7です!」

「もっと自分を認めてあげてほしい」「もっと自分を褒めてあげてほしい」そうやって口で言っても、想いは正しく伝わらない。それがとても難しいことは、他でもない彼らがきっとよく分かっているはずだから。

「もう一度言います。IDOLiSH7は最高のアイドルグループです!」

だから言おう。
みんなが自分で自分を傷つけてしまうのならば、自分が代わりに彼らのことを肯定しよう。

「皆さんがここでバスケをしていた時からずっと応援してきました。だから、信じてください…!」

何もなかった頃の自分に勇気と元気をくれた。その彼らが下を向いて俯いてしまうのなら、今度は自分が、愛と希望を与える側に回ろう。

「IDOLiSH7はここにいる7人の誰が欠けても誰に代わっても不完全です!」

IDOLiSH7の最初のファンとして、でもファンになり切れない存在として。彼らの"裏側"まで全て知っている、隣りに寄り添える者として。小鳥遊紡は声を大にして叫びます。

「ここにいる7人が、パーフェクトなんです…!」

それが最も近くで彼らと、周りの人々を見てきた彼女だから言えること。そして多くのファンの「声」を共に受け止めてきた彼女だから見えている、IDOLiSH7が愛される理由。

「顔を上げて、胸を張って、ありのままのIDOLiSH7でいてください!」

何が正解かは分からない。何をしたら現状から脱却できるかも不確かなまま。その中で失ってはいけないものだけは明白で。それを繋ぎ止められる唯一の存在として、持ち得る全ての想いを目の前のアイドルたちに伝えます。

「これからもずっと、ずっと――」

小鳥遊紡はIDOLiSH7のマネージャー。
純粋なファンでもなければ、身内でもない。仕事上のやり取りが失われれば無くなってしまうかもしれない、そんな曖昧で弱々しい関係性。

「――よろしくお願いします!!」

だからこそ"アイドル"としての彼らを最もよく知り、これからも共に在りたいと願うことができる。彼らにとって替えが利かない特別な存在になることができる。

「応援しています」とも「頑張ってね」とも違う、彼女だからかけられる唯一の言葉。「よろしくお願いします」は自身への肯定も否定も飲み込んで、"必要とされる感覚"を彼らの胸に蘇らせました。

これからどうして行くかは、彼ら自身が決めること。もっと辛く苦しいこともきっとあって、挫けそうになることは何度もあるでしょう。

それでも今日この瞬間の彼女の熱意は彼らの記憶にしっかりと焼き付いて、寸でのところで彼らを踏み止まらせる。ほんの僅かな時間が、今後の人生を大きく変えるキッカケとなる。

その可能性を、小鳥遊紡は見せてくれたと思います。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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