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キンプリオタクの『アイナナ』2期ミリしら感想 第3話第4話 苦渋の提案 未来へ繋ぐ「あらたなかたち」

投稿日:2020年10月22日 更新日:

大きなチャンスを与えられると共に、大きな壁の存在にも直面することになったIDOLiSH7の7人。

得難き機会ゆえに、前のめりになる気持ちを抑えることができないもの。それは普段なら起こるはずがないイレギュラーとなって彼らの身に襲いかかるのです。

ここで正しい選択が取れるかどうかが、未来の行く末を決めかねない。そん厳しい状況下で、答えなき答えを掴むことが果たしてできるのでしょうか。

"正しさ"とはどこから来て、何によって決まるのか。その葛藤と戦う第3話第4話の内容を紐解いて参ります。

一寸先は光と闇

七瀬陸の体調不良を乗り越え、何とか大盛況なままライブを終えることができたアイナナたち。

しかしそれによって「アンコールに陸が出てこなかった」という事実が無視されるわけではありません。その事実はファンと関係者、そして当人たちの心に僅かながらの不安を残すことになりました。

そんな彼らの心配を他所にゼロアリーナの支配人は、アイナナのポテンシャルを評価。こけら落とし公演の2日目は、無事アイナナに任せてもらえることに決まったのです。

とりあえず「陸を出さなかったせいでチャンスが反故になる」という最悪の展開は回避され、ホッと一息というところ。もしそうなってしまったら当事者である陸はもちろん、その意志を否定してまで彼の体調を優先させたメンバー全員が、尋常ではないダメージを負ってしまったはず。

それが分かっていたからこそ、一織や大和は本来自分たちがやる必要のない「営業活動」をする覚悟を決めていたのだと思います。それは彼らのメンバーを想う優しさとも言えますし、プロ意識の高さであるとも言えるでしょう。

ですがチャンスをものにしたことと、問題が解決されることは別の話。むしろ大きなチャンスを掴んだことはより大きな重荷を生み出し、陸の体調に影響する場面も増えて行ってしまうでしょう。

IDOLiSH7は今が正に発展の時です。国民の誰もが知るアイドルへの階段を昇り始めたこの瞬間、軽んじて良い仕事、蹴っても良い仕事など1つとしてあるはずがありません。仕事の大小はあれど全てが重要で、全てが彼らの知名度向上に繋がっています。

だからこそ置かれている状況はより厳しいものになる。

良い話が舞い込んで来れば来るほど時間と体力は圧迫され、彼らが現在抱えている不安は大きくなっていくからです。

そのジレンマを自覚した上で、今後の活動方針を決めなければならない。その大きな大きな分岐点が、彼らの眼の前に立ちはだかりました。

提案

「IDOLiSH7のセンターを、替えましょう」

マネージャーである紡が一織に提案した内容。それは一時的に陸をセンターから外し、一織を臨時のセンターにするという選でした。

陸の体調は季節的にも悪化することが想定され、今までと同じレベルで歌い続けることさえ厳しい状態に。その上で今まで以上の仕事とプレッシャーを与えてしまったら、陸はほぼ確実にまともな活動ができなくなる。彼の性格を思えば、再起不能になるリスクも決して小さくないでしょう。

だから彼をひとまずセンターの責務から解放し、1メンバーとしてできる範囲で最高のパフォーマンスを行ってもらう。それがベストだと言うのがマネージャーとしての彼女の決断でした。

それに食い下がるのは他でもない、共にアイナナをプロデュースしてきた一織です。

一織はここでセンターを替えてしまったら、陸はもうセンターに戻れなくなると思っているようでした。

アイドルのセンターが誰であるかは、世間にとっては非常に重要な情報です。グループのリーダーよりもセンターの方が人気と知名度を得ることは、現実のアイドル業界でも当たり前の事実でしょう。

これから知名度を大幅にアップさせようという時期にセンターを交代してしまったら、より多くの人が陸をセンターだと認識できなくなります。そして一度定着した世間のイメージとは、簡単に覆るものではありません。

仮に今を知るファンたちが「元々は陸がセンターだった」「今は一時的に交代してるだけ」と主張したとしても、新たにアイナナを知った人たちは「へぇそうなんだ」で終わるでしょう。

それどころか「でも交代して"売れた"んだから、今のままで良いんじゃない?」と、それまでの積み重ねを知らずに軽々しくあしらうかもしれません。浅い関心を持つ「大衆」とは、得てしてその程度の認識しか持たないものです。

良い悪いの話ではなくそれが現実。言葉で簡単に「また元に戻す」と言っても、世間がそれを許すとは限らない。そしてそうなるのが確実な以上、ここで陸をセンターから下ろすことは、彼のここまでの努力を全否定することに繋がりかねないのです。

一織の夢

「七瀬さんはセンターから外しません!」

一織はそれを恐れて、断固として反対しました。「陸はできる」「センターでい続けなければならない」と言葉を荒げるのは、それだけ陸のことを強く想うからでしょう。

「他のメンバーの名前は知らなくても、IDOLiSH7と七瀬陸の名前は覚えてもらいたい…」

ここまで自分たちを引っ張ってきてくれたセンターが、一時の「間の悪さ」のせいでそれを否定されることなどあってはならない。アイナナが大きくなった時、誰よりも大きな賞賛と名誉を得なければ七瀬陸は報われない。

「ここで間違えば、センターは永久に七瀬陸では無くなります…!」
「必ず陸さんをセンターに戻します!」

それが彼にセンターを任せてきた1人のメンバーとしての感情であるし、そうなるようにプロデュースしてきた一織の果たすべき責任でもありました。

「…そういう話ではありません。最初の印象が…肝心なんです」

しかしその"感情"が果たして本当に「陸のため」となっているのか。何か別のノイズが混じった、不適切な解答であるのではないか。

考える者かつ演じる者という、とても両立が難しい立場を担う和泉一織。この時はまだ、その自身の判断を客観的に見ることができてはいませんでした。

理想と現実 論理と経験

復帰した陸は何とかステージに立つことができはするものの、やはり本調子でやり切るのは難しい状態に。

とある番組収録では九条天に諫められたことが精神的な重しとなり、リハーサルさえ満足に行えなくなってしまいました。

おい天、何てこと言うんだ人の心がないのか。と言いたくもなりますが、たった1つのイレギュラーで開幕から駄目になってしまうようでは今後の活動に確実に支障が出るのは事実でしょう。

あのやり取りはそのキッカケに過ぎませんでしたし、むしろ見知った関係であるTRIGGERとの仕事でそれが露わになったことは"まだマシだった"と言えるかもしれません。そこまで天が考えていたかは何とも言えないところですが…。

うなだれる陸を見ても、矢継ぎ早に彼のことを責め立てる天。その尋常ではないストイックさには、さすがの一織も声を荒げます。普段はほぼ感情的にはならない一織と天が、バチバチと火花を散らす珍しい1シーンでした。

彼らはそれぞれが陸のことを想うからこそ「必要な対応」をしているに過ぎません。自分が全うすべき立場の中で、できる範囲のことを伝える。この2人はこの時、互いに同じような想いで陸に接していたと思います。

ただ、深部では同じでも、表出する価値観に差があるからぶつかり合う。同じ想いを持つ者ほど誤解によって対立しやすい現実があり、それがまた自分を見つめ直すきっかけにもなるものです。

「――もうちょっと陸の気持ちも考えてやれよ」

前半で大和から言われた言葉が、きっとここまで来て初めて実感となって一織の心に沁み渡りました。

陸のことを想うがあまり、その「陸を想うという自分の気持ち」を優先してしまっている事実。

そのことに自分だけで気付くのは大変に難しい。彼は頭が回りはしますが、まだ若く経験が豊富とは言えません。故に彼が掲げる論理は、相応に一直線なものになってしまいます。

「理想やプランを押し付けすぎると、
上手く回っていた歯車も次第に狂っていくぞ」

頭が回るが故に、自分のベストを信じ込みすぎてしまう。他の可能性を抱き込んだ多面性を理解できない。

それが今の和泉一織の弱点でした。

彼は自分の論理と判断に大きな自信があるようでしたし、実際にアイナナはそれもあって順調にステップアップを遂げてきています。その経過を思えば、より意固地になるのは仕方がないことです。

だからこそ彼には大きな経験が必要だった。「自分は間違っていたかもしれない」と思わされる出来事が目の前に突き付けられなければ、一織が自分の理想から脱却することはきっとなかったでしょう。

そしてそれに出遭ってしまったからこそ、彼は「九条天に感情的に当たる」ことでその感情を清算しようとしてしまったのだと思います。

決断

「マネージャー…認めます」

この一件は一織にとっては大きな挫折。
同時に大きな成長の機会でもあります。

「貴女が正しかった。私が間違っていました」

自分の否を認めるのは大変に勇気がいることで、誰もが当たり前にできることではありません。

それでも一織は、その自分自身と向き合うことから逃げませんでした。

その経験を経て、初めて人は自分の外を取り入れた論理を展開できるようになります。そしてそれまでに自分と違う目線で意見してくれていた人の話を受け入れ、尊重できるようにもなるのです。

「センター変更の件、お引き受け致します」

新たな知見を得た和泉一織は、決意を持ってIDOLiSH7のセンターへ。

それは決して自分のためではなく、自分と共に歩む仲間のため。自分が理想とした七瀬陸の未来を守るため。

演じる者としての彼の新たな挑戦も、ここから始まりました。

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