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キンプリオタクの『ヒプマイ』感想 第3話 病める街シンジュクの夜 真のリーダー 麻天狼DA!!

投稿日:2020年10月20日 更新日:

 

熱いストーリーが展開されると共に、視聴者を爆笑の渦にも巻き込んだ衝撃の『ヒプアニ』第2話。「これは恐ろしいトンチキアニメが始まっちまったぜ...」と多くの人が心の中で反芻したことでしょう。

そこから地続きで展開される物語がどのような内容になるのか、色々な意味でワクワクしながら迎えることになった第3話です。

今回の担当はシンジュクディビジョンの麻天狼。病める街シンジュク代表の3人が、早くも主人公となりました。

概ね『ヒプマイ』は初期の並びである「ブクロ→ハマ→シブヤ→シンジュク」に倣うことが多いので、3話で彼らがフィーチャーされることには意外性もありましたね。

そんな彼らがアニメで動き、奔走し、大活躍する物語。「Two heads are better than one.」 。"三人寄れば文殊の知恵"を意味するこのサブタイトルが付いた意味を、しっかりと読み解いて行きましょう。

病める街シンジュク

「ここはシンジュクディビジョン…。不夜城の輝くネオンとエネルギーに引き寄せられた、愛と欲望が渦巻く街」

日本の中枢たるシンジュクの街は、現実世界と同様に夜まで煌びやかな光に照らされ続けた"眠らない街"のようでした。

その光は決して上品な輝きばかりではなく、どこか陰鬱でおぼろげ。下劣なものを覆い隠そうと努力するような、強烈な勢いを持つものが大半です。

2話にてフィーチャーされたイケブクロディビジョンも、絵に描いたようなスラム街の空気を放った風土。実際の池袋にもそのような側面はあるのかもしれませんが、あそこまで酷いものではないでしょう。

シンジュクにおいてもそれは同様。かの街の空気は、現実の新宿の下世話な部分をより煮詰めたような空気を放っています。

「国籍…性別、人種、文化、価値観。寄せ集めの街に、常識は通用しない」

『ヒプマイ』のH歴は武力廃絶が行われている世界ではあるものの、その歴はまだまだ浅く、過去の武力闘争の残滓がまだまだ残っているのが現実のよう。そしてH歴が施行されたということは、それを「施行しなければならない世界だった」ということでもあります。

それだけ卑劣で無法地帯染みた様相が強い"日本社会"が、この『ヒプノシスマイク』の世界には拡がっていると考えるのが自然でしょう。

「――そんな人々が、今日も不可思議な事件を引き起こす」

そんな悪意が凝縮された日本の中枢で、冷静沈着に職務を全うする一介の医師、神宮寺寂雷。"訳あり"な過去を持つ彼は、今日もまた危険な事件という"日常"に身を投じて行くことになるのです。

観音坂独歩の憂鬱

シンジュクの街は、様々な仕事に従事する人で溢れています。

寂雷と共に麻天狼の一員として活動している観音坂独歩は、平身低頭で日々の業務に邁進する「普通のサラリーマン」。

その中でも彼は頼まれたら断れないタイプ、仕事を押し付けやすいタイプ、働かせても文句を言わないタイプ、といわゆる社畜適正MAXの社会人です。

覇気もなく意思もなく、ただただ目の前の業務を与えられるがままにこなして行くだけの毎日。そんな日々に嫌気が差していながらも、そこから脱却する勇気も持っていない。彼の在り方には、どこか共感を覚えてしまう人も少なくないでしょう。

街を歩くその姿を見て、まさか彼がシンジュクディビジョンを代表するラッパーだと思う人はいないでしょう。その事実を知っていたとて、すれ違う彼が本人であると気付く人もいるわけがありません。

本当にこんなことでラップできるのか?彼が"化ける"タイプだと知っている視聴者でさえ、そんな不安を抱いてしまうような完璧な「社畜」っぷりは、とても涙なしで見ることができません。

同僚とハゲ課長に理不尽に仕事を押し付けられて、パワハラも大概酷いブラック企業勤務で身も心もボロボロになり帰宅する独歩。迎え入れてくれる家は思いの外に豪華なマンションの一室です。

H歴の社畜、そんなに儲かるのか?と感じるブルジョワジーな暮らしをしています。羨ましい。そんなに貰えるなら働けば良いじゃないか。馬車馬のようにな。嘘ですごめんよ。

そして今回、家で彼を迎え入れてくれたのは愛する同居人…ではなく、何と1人の見知らぬ死体(暫定)。家に帰ってきたら人が死んでいた。その恐怖たるや、疲れた身体と心を現実に引き戻すには十分すぎる劇薬です。

慌ててトイレに駆け込み警察に電話(※ガラケー)をしようとしたその時、独歩はある1つの可能性に思い当たります。

家には鍵がかかっていて中で人が死んでいるのなら、殺したのは家の中に自由に出入りできるもう1人なのではないか?

作品的にはあり得ないことですが、現実的に考えればそれは当たり前すぎるほど当たり前すぎる結論。自分の家の鍵を勝手に複製して使用できる人間などいるはずがないのだから、元々鍵を持っている人間を疑うのは自然です。

警察に電話をかけるのをやめ、独歩は見知った電話番号へのTELコールを優先します。

「一二三!!! お前誰か殺したのか!!?」

二重人格(?)者 伊弉冉一二三

「はぁ? 君は何を言ってるんだ?」

まぁこっちはこっちで当たり前の反応。彼と同居している伊弉冉一二三は同じく麻天狼に所属するチームメイトにして、幼なじみ。2人にとって数少ない親友同士の彼らは、何故か分からないが同じマンションの部屋で同居しているようです。

いやこういうのは一般的には「ルームシェア」と言うべきであり、「同居」という言い方には色々と語弊があるのが現実。それが現実で、現実的に考えたいところだが、第2話での彼らの距離感を見れば「これは同居と言わざるを得ない」と多くの人が感じ取れるはず。というわけで彼らは同居しています。

一二三はシンジュクNo.1ホストの肩書を持つ好青年。容姿端麗で甘い声に出来すぎた立ち振る舞いと、正にホストが天職とも呼ぶべきオーラを放っています。きっとマンションの家賃も、彼の稼ぎから出ているのでしょう。

しかし職務から放たれればどちらかと言わずともそのノリは軽め。チャラいと言うよりは幼いといった感じに周りと接するタイプ。

しかも仕事用のスーツを着ないと女性と全くまともに喋れない女性恐怖症という一面も持っていて、仕事とプライベートでは二重人格レベルで人間性を違えています。

死体を見ても全く動じることがない持ち前の明るさで、サラッと「独歩が殺害した」ことにする一二三くん。これについてはお互い様とは言え、「こいつがやってないわけない」という信頼を互いに持っていない辺りがあまりにもシュール。むしろ「こいつならやるかもしれない」と思っている辺りが信頼関係とさえ言えるのかもしれない。

そんなこんなで謎の殺人事件に巻き込まれた幼なじみ2人組は、無能警官の目と耳を掻い潜って脱走。「別に無実なんだから逃げなくても良くない?」とも思いますが、そこをしっかりと調べてくれる警察ではないのかもしれません。その後の寂雷先生との会話的にも、あまり信用できない状態にあるのでしょう。

たまたま居合わせた寂雷先生と合流し、麻天狼の3人は真実を突き止める戦いへと身を投じることになりました。

絶対的存在 神宮寺寂雷

シンジュク中央病院でその辣腕を振るう神宮寺寂雷先生は、麻天狼のリーダーにしてラッパーとしても相当な実力の持ち主。チームの絶対的存在として君臨しています。

一見すると物腰の柔らかい人格者にしか見えませんが、その裏側に多くの感情を抱え込んで宿しています。この街で感情を乱されることなく"普通に"生き抜くには、相応の実力と術が必要だということでしょう。

またその人脈も侮れません。今回の事件の解決に当たっては、裏社会の内情に詳しい者として、ヤクザの若頭であるヨコハマディビジョンの碧棺左馬刻の力を借りました。

社会のはぐれ者であるはずの彼でさえ「先生の頼みじゃ断るわけにはいかねぇか」と笑顔で電話対応するほどに、信頼を置かれているのが見て取れます。それだけ寂雷が、あらゆる方面から人格者として慕われる存在であるのが分かります。

必要であれば社会悪に属する者にも協力を仰ぐ。ただしそれはあくまで"利用"ではなく"協力"。普段からあらゆる相手に紳士的かつ友好的に接しておくことで、その結果として自分の使える手札を増やしておく。全ては因果応報。それこそが神宮寺寂雷のやり方です。

そして彼が為すことは常に"善"の意味を持つのです。得られる結果が"善"であるならば、その過程に"悪"が入り混じることは許容する。そういった懐の広さ、臨機応変さも彼の持つ魅力の1つでしょう。

当然赦すばかりではなく、悪しきをはたらく者にはしっかりと罰を与えもします。場合によっては自ら手を下すことも厭わないどころか、それを楽しみさえするのです。そういった冷酷な一面を覗かせる瞬間がまた、最高に見る者の心を鷲掴みにしてくれるものです。

片手にはマイク、片手にはビリヤードのキューを笑顔で構え、優雅に指名手配犯に金的を炸裂させようとするその姿はある種の狂気。絵的にも狂気。恐らくヒプノシスマイクでダメージを増幅させる(想像)ので、決まっていれば確実に急所を破壊したことでしょう。

一介の医師では到底実行できないような方法、リーダーが積み上げてきた徳を最大限に活用し、確実に仕組まれた闇に迫って行く麻天狼。

彼らが辿り着いたのは一二三が勤めているホストクラブの元ホストと、それと関係のある常連客の女性でした。

痴情のもつれが生んだ悲劇?

独歩をハメようした女性「え?」と聞き返したくなるような名前の美々海さんは、貢ぎ先であった元ホストの蟒蛇(これはこれで酷い名前)を利用し、男性の殺害を断行しました。

何でも彼女は一二三のことがあまりにも好きすぎるあまり遠くで見ていることしかできず、蟒蛇に貢ぐことで一二三の店に通い続けていたとのこと。

それだけでも感情が迷子で厄介ですが、美々海はなんと今では「蟒蛇の女になっている」らしく、一気にトンチンカンな状況に。何故かそれを高らかに一二三に宣言する蟒蛇という男の小物っぷりがあまりにも哀れで見ていられない。

「でも心は一二三くんのものなの!」

なんだこいつ。
まぁ何と言うか、心と身体を切り離して考えられるのは良いことだと思います。

美々海は一二三の生活圏に存在する全ての鍵を複製し所有しており、当然(?)家に一緒に住んでいる独歩の存在にも気付いていました。

家に一緒に住んでいるということはつまり、それだけ心を許しているということ。一二三に心を奪われ尽くした彼女は、いつしか同居人である独歩に恨みを募らせてしまったようです。良い迷惑だ。

そこで一二三の家に忍び込み、そこで他人を殺害。完全犯罪(完全とは言っていない)を仕立て上げ、独歩に濡れ衣を着せることで彼を一二三の隣りから消そうと試みます。

「この人マジヤバい人だ!!?」

いや全くもってその通り。
これほどまでに視聴者代表として喋るキャラクターが、長いアニメ史の中と言えど存在しただろうか。ありがとう独歩くん!

しかし残念ながら、実行犯の蟒蛇が「殺害に使用したネクタイが独歩のもの」だったため、その濡れ衣は一二三ではなく独歩に被さってしまうことに。それだけで嫌疑がかかる人物が変わるのもよく分からないが、とりあえずスルーしよう。

しかもしかも、

「って言うか、じゃあ死んでたの誰…?」
「あらぁ美々海の旦那よォ」

とのこと。いや"とのこと"とか言ってる場合ではないが。

「旦那までいるのぉ!?」

ありがとう独歩くん!!

蟒蛇的には「旦那を殺せば美々海は正真正銘俺のものになる」そうで、まぁとりあえず本人がそう思ってるならそうなんでしょう。蟒蛇くんについては「身体が自分のものになればOK」という点に一貫性が見えるのでまだ分かります(分からない)

恐いのは「旦那に関する話題が美々海の口からは一切出てこないこと」と「美々海の一二三への想いに蟒蛇が一切言及しないこと」(※一二三に罪を着せようとした理由は「前々から気に入らなかった」)ここに来て、関係性の歪みが最高潮に。

どうしてこんな頭のおかしい話になってしまったのか。有象無象の指名手配犯もビックリの、正に病める街シンジュク代表。痴情のもつれは人を手にかける最大の理由となり得る。パートナー選びは慎重に行わなければならないということをしっかりと学ばせてくれる、教育意識の高い物語が展開されています。

つらいウザいうるさい――

「誰がミジンコだ……」

そしてここまで話を追ってくると、視聴者の多くの人が否応なく気付かされるのです。

「どいつもこいつも好き勝手言いやがって……!」

独歩関係なくね?

マジで1ミリも関係ない。彼は本当の意味で無実の罪を着せられた第三者に過ぎない存在でした。

「毎回毎回毎回残業残業残業…!
デート?外せない用事?ハゲに至っては"何もない"?」

さすがの独歩も我慢の限界に。ここに至るまでの全てを追想し、溜めこんだものの全てを吐き出します。そう、彼にとってここまでの一連の流れは全て、同じ日の夜の出来事。全てが解消されず、全てが積み重なったまま、この瞬間を迎えています。

「俺が一体何をしたって言うンだ!?」

誰が相手とか、誰が関係者とか最早気にする必要はない。だって自分はこれまで「関係ないもの」を押し付けられ続けてきたんだから。その自分が無関係の者に怒りをぶつけることに、どんな理不尽が存在するだろうか。

――なんてカッコいいことを独歩が考えているわけもなく?

ただただ今の彼は荒れ狂う感情を目の前の存在にぶつけるのみ。

「関係ない俺を撒き込みやがって!!」
「なんかごめん独歩くん!」

いつだって恐いのは根っからの悪人ではなく、耐え切れなくなった善人の蛮行で。その「何をしでかすか分からない」恐ろしさこそが、観音坂独歩が戦場に立つ原動力です。

「――お相手をしましょう」

ただの弱き者ではなく、存在感のないミジンコでもなく。シンジュク最強 麻天狼の名にふさわしいメンバーとして。3人は横並びでマイクを握り言葉を奮います。

「WELCOME U」

"時は来た" Burn your spirit
"白か黒か" Shinjuku Zentai

どう見ても変身するとしか思えない独歩のヒプノシススピーカー現出シーンを挟み、始まった麻天狼のRAPシーン。ガラケーを日本一カッコ良く使うキャラクターと化した。

新曲「WELCOME U」は、シンジュクディビジョンらしいダーティーな雰囲気が魅力的な1曲。

主張しすぎない弱々しいメロディを基調に、どこかナイトクラブで流れていそうな空気感の音遣い。そこに3人の声が乗ることで、王者としての風格さえ感じさせる。3人の異なる個性が1曲に反映された、独自性の強い音楽を奏でています。

バトンを繋ぐように意志を歌い上げるソロ歌唱を経て、それらが1つにまとまって麻天狼と化すトリオ歌唱へ。異なるものを混合させて出来上がるその音は、どこか無機質で人間味を感じさせない在り方です。

しかしだからこそ彼らの音楽は周りの人を魅了して止まない。彼らの在り方に吸い寄せられ、自分たちもまたその内側に入り込んで織り交ぜられる。その彼らの一部として一体化して行く快感こそが、神宮寺寂雷を筆頭とした麻天狼の根源的な魅力なのです。

"さぁ決めようか"
準備いいか? 真のリーダー
麻天狼 DA!!

そうしてシンジュク全体の業をぐちゃぐちゃに内包した感情の坩堝と化し、淫靡な調和を持ってその頂点に君臨する。

流れるシンジュク最強説。弱き者も強き者も関係なく中に迎え入れ、「個にして全」の気をまとう。シンジュク麻天狼は、ディビジョンラップバトルの勝利へ向けて確実に歩みを進めます。

おわりに

シンジュクのストーリーは、2話からまた少し毛色が変わってストーリー重視の展開に。

冷静に考えると「何のアニメだ?」という内容が最初から最後まで続きますが、まぁ『ヒプノシスマイク』はラップを戦闘シーンに宛がったホビーアニメなのでこんなものでしょう(?)

トンチキ要素も入り混ぜながら、人間の感情と業に焦点を当てた丁寧な物語。内容自体は目まぐるしく渦巻く狂気によって進行する、見応えのある一話となっていたと思います。

エピローグでは独歩と一二三の仲睦まじい日常風景も見ることができて、しっかりとキャラクターの良さが実感となって伝わってくる構成に。独歩ちんの魅力を分かる人間は、実は本人の目の前にいたりする。彼にとってはそれで十分なのかもしれない。

『ヒプアニ』は今のところ一話ごとに少しずつ異なった魅力を表現してくれるアニメとなっていて、「今週がこうだったから来週もこうだろう」とは言えない面白さがあります。

次週の担当は今回ちょい出しされたヨコハマでしょうか?それとも1話以降はまだ登場していないシブヤ?どちらが来ても楽しみですね。それではまた次回の記事で。

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