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キンプリオタクの『あんスタ』ミリしら感想 アプリ編㉘「スカウト!千夜一夜」

投稿日:2020年11月4日 更新日:

今回は「スカウト!千夜一夜」を書いて行きます。

「ジャッジメント」の後日談に当たる「ロビンフッド」を除くと、2016年の「スカウト!」では執筆要望がかなり多く届いていたストーリーです。

フィーチャーされるのはUNDEAD。
ユニット単位で活躍するストーリーは幾つか見てきましたが、ほぼ彼らのみが活躍するストーリーは実は初めて(のはず?)

『あんスタ』(※日日日先生執筆シナリオ)はイベントでは多人数登場で複数のユニットの絡みを中心に、「スカウト!」では少数に絞って普段見られない関係性を描く、というスタンスでの展開が主。単一のユニットのみが登場するストーリーが実はあまりなかったんですよね。

徐々にそういうものも増えて行くのかな?という雰囲気を感じつつ、そのやり取りを堪能させてもらいました。それでは読み解いて参りましょう。

乙狩アドニスの弱点

UNDEADに舞い込んできたラジオ番組の依頼。
普段は放送部など一部の学院生によって回されているものが、諸々の兼ね合いで彼らに回ってきたというエピソードです。

前述の通りですが、ユニットが勢揃いしていながらライブ(ドリフェス)の話が行われない特殊な内容である「千夜一夜」。ラジオの仕事自体が夢ノ咲の中で少し軽んじられていることもあってか、普段よりもかなり緩いUNDEADのやり取りを見ることができるのが魅力です。

とは言うものの、彼らは元々取り立ててカッチリした空気のユニットではありません(カッチリした空気のユニットなんてほぼないのだが)終始のんびりとした空気で話が進行し、終盤でいきなり激しい自分語りが始まるという『あんスタ』らしい構成に。

その話の主軸に据えられたのは2年生のドドニスくん。誰だ、乙狩アドニスくんです。今回は最初から最後まで彼が常に存在感を放っていて、実質的に彼のためのストーリーと言っても過言ではない内容でした。

中核である朔間零を筆頭に、荒くれ者の晃牙、ファンサが得意な羽風と、個性を活かした着飾らないパフォーマンスが魅力的なUNDEAD。その中でひたすらに寡黙で、歌とダンスで人を魅了することに徹しているのがアドニスでした。

彼は喋りたくないから喋っていないのではなく、喋るのが苦手・人と接するのが苦手だから「自然と避けてしまっている」状態。本人に改善の意思があっても、そうすることができないレベルで不得手なのがその部分でした。

ユニット単位で見れば個性の役割分担はしっかりと成立しており、今のアドニスに問題があるとは思えません。しかし1人のアイドルとして考えると、できないことは潰しておいた方が良いのも事実です。「できるが得意ではない」のと「できない」の間には、うずたかい壁があるものです。

零も「あの子のほとんど唯一の、そしてアイドルとしては致命的な弱点」と漏らしており、ユニット内でも1つの課題として共有されてはいる様子。ただ「アドニスの改善のため」にステージを消費する余裕もなく、とりあえずは各々やれることを全力でやっているという感じでしょうか。

言い方を換えれば、アドニスはステージングについて、弱点を補って余りある実力を持っているということ。そちらを活かし切った方が、UNDEADとしては優れたパフォーマンスができるのは確実です。

そんな彼らに回ってきたラジオの仕事。
「結果重視のドリフェスではなく」「人前に立つことでもなく」「話すことだけに集中できる」それは、アドニスのステップアップの場として非常に有意味なものであると判断されたようでした。

「立ち回り」が招く負のループ

ラジオ番組のリハーサルに立たされたアドニスは開幕から奇行を連発。発言もしどろもどろで、周りの心配がそのまま的中したという感じに。物語としては、そこから彼のより深い人間性が見えてきます。

アドニスは何事にも真面目に取り組むタイプで、全ての行動に遊びがありません。求められたら全力で応えようとしてしまうところもあり、それが得意か不得意かはあまり関係がないようです。

だからこそ彼には「特別な苦手」が生まれてしまうと言いましょうか。

普通の人は苦手なことを自覚したら、それを避けて生活するようになります。可能な範囲で得意なことや好きなことだけをして生きられるように、上手く立ち回って行くものです。

誰しも苦手なことを100%完璧に実行するのは不可能です。だからそれを自覚した上で、自分なりにやり過ごす。

そういった術を身に付けるのが、上手に生きるためには重要でしょう。アイドルのような人前に立つ仕事の場合、尚更のことかもしれません。

アドニスが圧倒的に不得手なのはこの「立ち回り」であり、物語の冒頭でも羽風にその点は指摘されています。真面目すぎるあまり、器用に立ち回ることができないのですね。

こうなると、目の前で起きている全てのことをこなして行くしかなくなり、結果として自分の苦手なことを押し付けられる機会も増えて行きます。そしてそれは本人のコンプレックスを刺激して、やがては「特別な苦手」を生み出してしまうのです。

トークにも役割がある

できないことを完璧にこなそうとして、上手く行かない。それを繰り返して行くうちに1回1回の経験がトラウマとなり、余計に上手くできなくなる。でも何とかやり切ろうと必死になってしまう。真面目な人ほど、延々とこの負のループにハマってしまうものです。

特にアドニスは自分には取り立てて特徴がないと思っていて、自分の話をすることに抵抗があったようです。その上「アイドルとはステージ上の歌とダンスで魅せるもの」という固定観念を強く持っていることも、心に歯止めをかけてしまっています。

そこから個人の力で脱却することは大変に難しく、その弱点を理解してくれる仲間の助力は必要不可欠です。

上手くできない人のことを見て「情けない奴だ」「ちゃんとやってくれよ」と無責任に嘲笑う人の方が多い世の中。それでも真面目にやっている人の周りには、必ずその努力と悩みを理解して助けてくれる人が集まります。

アドニスにとってUNDEADはそういう仲間であり、夢ノ咲学院で彼と交流する人たちもまた同様にそうなのだと思います。

それに"上手く喋る"ことだけが、人前でトークする技術というわけではありませんから。

流暢に喋る人もいれば、必要なことだけズバッと言う人もいる。面白いことを言う人もいれば、普通に喋っているだけで面白くなる人もいる。

トークにもまた果たすべき役割があり、誰もが同じようにこなせば良いというものではありません。

そういったことが実感を持って分かるようになった時、アドニスは今の苦手意識を克服できるのかもしれませんね。

今回活躍したキャラクター達

では今回もその他の登場キャラについて、少しずつ触れて行きましょう。

朔間零

おじいちゃん。
基本文句しか言っていない。

にも関わらず、何だかんだ言って最後に美味しいところを持っていくズルい人。UNDEADは何らかの理由で彼と結び付きを持った人が導かれた印象があるので、元を辿ると朔間零のカリスマに行き着いてしまうんですよねぇ。

今回は特に老いぼれ方が酷いので、周辺で何かあった疲れが原因かもしれません。時期的にサマーライブに重なっていることが関係している?

大神晃牙

過去一育ちの良さが爆発している。

UNDEADは年長組2人が自由奔放の極みなため、他のユニットのキャラがいないと必然的に晃牙が100%突っ込み役に回らざるを得ない状況にあると実感させられました。彼のヤンチャなところは、同輩か後輩の間でしか見せられないこともよく分かります。

結果的に発言がほぼ全てまともという奇跡が起きており、朔間零に対してはお母さんのようなツッコミ(?)を繰り返す羽目に。

ただ、育ちが良さそうなことは今までのストーリーなどから十分に実感できるのですが、バックボーンは実はよく分かっていないキャラの1人で。この「千夜一夜」にて、UNDEADでは登場シーン以外の周辺情報が最も少ないキャラになりました。

「返礼祭」でも取り上げられた、零との過去の関係性がキーポイントになりそうです。大人しく「追憶」を待ちましょう…。

羽風薫

親絡みの話題が地雷らしい。

「荒野のガンマン」にて家族関係にてトラブルがあったことは分かっていますが、やはり親とも一悶着あった様子。夢ノ咲に入学したことも、簡単な話ではなかったことが分かりました。逆に言えば、それだけ彼もまた"アイドル"に懸ける想いが強いキャラの1人になるのでしょう。

家庭事情が複雑故に「気楽に生きること」の重要性を肌で感じている雰囲気で、それが今回のアドニスへの助言に繋がっている印象。

何も考えずに気楽に生きている人ももちろんいるのですが、色々なことを考えた上で「気楽を選ぶ」人も大勢います。そしてそうなって行く人には、相応の理由や取捨選択が存在しているものだと思います。

抱えているものは想像よりも大きそうです。家柄というのは、本当に当事者にしか分からないしがらみが無数に存在するもの。1つ1つ分かるたびに寄り添ってあげられれば、と思います。

仁兎なずな

放送部員として登場。
彼らが裏で仕事をしていることは都度話題に上がるのですが、放送部の活動が話のメインになったのはこれが初めてな気がします。

何だかんだ言って朔間零に高く評価されていたり、本人の認識以上に周りから地力を認められている印象があります。また零には「あれで仕事にはけっこう冷徹」と言われていて、ストイックなところはお師さん譲りなところもあるのかもな?などと思ったり。

過去の経験からか、基本的に周りの人間としっかりコミュニケーションを取って「良いところを褒める」のが仁兎の良いところ。その他愛ない言葉に救われる人もいるというものです。

Ra*bitsの方向性とその人間性が合っている故に、今の彼は活き活きとしているのでしょう。今回はそれがUNDEADと対比的に語られたのも妙でした。

あんず

零さんに何か滅茶苦茶言われているが心当たりがない。

直近で大失敗があったとのことなので、アニメの内容を加味するなら「サマーライブ」がそれに当たる感じ?でしょうか。

第二部「キセキシリーズ」は2017年の展開ストーリーのようなので、まだ1年分先の話になります。この時点で主軸の詳細な動きや設定が練り込まれていた…と考えて良い?とすると壮大な伏線に。

彼女についてもパーソナルな情報が提示されるストーリーが少しずつ増えているので、キャラとして見てあげる機会も増やして行きたいですね。頑張れみんなの転校生。

みんなに、笑ってほしい

終盤では、アドニスがアイドルを目指し始めたキッカケが語られました。

アラビア半島の小国(その時点でかなり限られるが)にて生まれ育った彼は、日常生活の脇に常に紛争がある人生を歩んできました。求められるものも狩猟など戦闘に関することばかりで、心休まることのない日々を送っていたことでしょう。

紛争地にいながらも夢ノ咲の関連校に出資した父と、紛争地を巡る楽団の一員として現地の子供たちを笑顔にしている母。心優しい2人の両親に恵まれたことで、彼もまた心優しい少年へと成長したようです。

明確に語られていませんが、父は立場を優先して国に残っているということから、何らかの葛藤の中で生きている人物だとも推察できます。生まれながらにして紛争に赴くのが当たり前な"世界"の中、その在り様に反発し疑問を持つことができたのも、両親の影響が大きかったことでしょう。

そんな時に彼が出会ったのが、今を共に生きることとなる朔間零でした。そしてそれは、アドニスにとって「アイドル」という概念との出会いでもあったのです。

彼にとって母が奏でる音楽は"救い"を体現するものであり、憧れと尊敬の対象だったのだと思います。争いは多くの人を苦しめ、時にその命を奪い去る。そんなものに加担するよりも、救い導く側に立ちたいという想いの方を彼は強く持っていた。

そして多くの人を喜ばせるために音楽とパフォーマンスを振るうアイドルは、彼のその理想とどこか合致するものだったに違いありません。表現の方向性は様々ですが、「他人に届ける」という価値観の中では、アイドルは最上位に位置する存在だと思います。

「俺は不器用で、口べたで……うまく喋れないが、音楽は、歌は世界の共通言語だ。あらゆる国境を越える、だから俺は」

だから彼はステージ上の音楽にこだわるのでしょう。彼にとってアイドルは自己実現の場ではなく、あくまでも目の前の誰かに「届ける」ことを意識した活動であったから。自分のことを伝えたい・表現したいという意志は、最初から持ち合わせていなかったのです。

「うまく言えないが、みんなに、笑ってほしい」

裕福で平和な国に生まれた者は、その範囲の中でしか幸不幸を語れない。その外側にある凄惨な現実に目を向けるのは難しく、知識以上の実感を伴うことはありません。

アドニスはそれを実際に見て、知って、どれだけ自分が恵まれた存在であるかを理解して。その上で自分の利益よりも、他人の喜びを優先したいと考えられる少年でした。

それを偽善だと遠くから嗤う人もいるでしょう。
大して興味も持たないままに他者の努力を否定し、妄想の中の代弁者を気取る存在はどこからでも湧いてきます。

「下手くそでも、ぎこちなくても……。言葉を尽くして、心を砕いて、みんなを笑顔にする」

それでも彼が"光"を届けたいと望む相手には、その気持ちは必ず届く。

目の前のファン、自国やその周りにいる子供たち、偶然その輝きに触れる人々。彼の行動をポジティブに受け止める人たちは、決してそれを無下にしたりしない。

それが彼の本当の気持ちだということは、パフォーマンスと振る舞い、そして言葉から絶対に伝わっていくからです。

「そんなアイドルに、俺はなりたかったんだ」

見据えるは世界。
少ない言葉数の中に、誰よりも大きな夢と願いを込めて。

乙狩アドニスは理想のアイドルへ向けて日進月歩。修練の道は険しく長いけれど、きっと努力が実る日はやってくる。

それだけのひた向きさと意志を彼が持っているのは、紛れもない事実。そしてそれを理解してくれる仲間たちが、彼のそばには沢山いるのですから。

おわりに

ステージ上では最高の輝きを放つアドニスは、ステージの外では苦手なことが多いアイドル。

しかし『あんスタ』はストーリーの9割が舞台外の会話で進行する作品。実際のところ、アドニスはその活躍する姿を見るのが難しいタイプのキャラ(なかなかアレな真実)発言力のあるキャラに比べると、どうしても目立たない存在でした。

だからこそ、その彼を中心とした物語というのは読み手の記憶に鮮烈に残るでしょうし、彼を取り巻くキャラからは新しい魅力を感じられたりするものだと思います。

アドニスは「海賊フェス」でもなかなか語気のある自分語りをしてくれたりなどしていますし、突発的にUNDEADを動かす起点となってくれているところもありますね。今後ともその"読めなさ"を楽しんで行けたらと思います。

最後にですが「海賊フェス」の際に、アドニスが姉から虐待を受けている?といった読み解き方をしましたが、今回の話を見る限りだとあれはミスリード(と言うかアドニスの語り口?)にまんまと引っかかったという感じがします。くそう、やらかしましたね。大きな誤解とは得てして1つの身勝手な解釈から始まることを実感させられる。

今後、アドニスとお姉さんたちの関係も改めて語られるストーリーがあるかもしれません。そちらにも期待して、今回はこの辺りで終わろうと思います。

しばらくは全く知らないことだらけのイベントストーリーが続きます。必ず新しいことが分かるので、1つ1つ読み進めるのが楽しみです。それでは。

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