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キンプリオタクの『あんスタ』ミリしら感想 アプリ編⑮「対決!華麗なる怪盗VS探偵団」

投稿日:2020年6月25日 更新日:

アプリ『あんさんぶるスターズ!』タイトル画面より

今回は「対決!華麗なる怪盗VS探偵団」。
2015年公開分で執筆する最後のストーリーです。

執筆するものの中では、初の日々樹渉が表題となったストーリー。演劇部がフィーチャーされる内容です。

演劇部はアニメでもチラホラと取り上げられていて、部活動の中でも存在感がありました。アニメで『あんスタ』における部活動が紡ぐ関係性の多様さを知る上では、欠かせない存在になっていたと思います。

僕も個人的に中身がかなり気になっていた関係性でもあり、また新しい扉を1つ開いたような感覚です。

ではその内容を追いかけて行きましょう。よろしければお付き合い下さいませ。

読み始めると…

「怪盗VS探偵団」は、演劇部のお話…だと思って読み始めたらお馴染のKnightsがこんにちは。

在籍者である真白友也の属するRa*bitsのメンバーも参戦し、思いの外に登場人物が多いイベントストーリーに。

その上、演劇部であるはずの氷鷹北斗はまさかの登場せず。あくまでも友也と渉の関係性を重点的に掘り下げた内容。アニメ新規としては演劇部=渉&北斗のイメージが強かったこともあり、何かと意外続きで読み進めることになりました。

友也に関してはアニメとここまでのイベントで目立った活躍がまだなく、この「怪盗VS探偵団」が真白友也のほぼ初めての見せ場です。同時に渉のパーソナルな部分も一部取り上げられ、初出し×初出しの関係性が描かれました。

またKnightsとRa*bitsという接点がほぼなかったと言っても過言ではない組み合わせ(※テニス部という魔境は一部履修済み)で進行するイベントでもあり、とにかく徹頭徹尾に新しいこと尽くめのイベントです。

アニメと原作含めて表面的な部分は大分さらってきたかな?と思っていた矢先に、この情報量過多のイベントとの遭遇。正にAmazing!最高のエンターテインメントですねぇ!

感想書きとしては、頭を抱えてしまうわけですが。さぁどうしたものか。という悲鳴から今回の記事は始めましょう。

瀬名泉と鳴上嵐

今回はまずKnightsの中から瀬名泉と鳴上嵐について取り上げて行きましょう。

「怪盗VS探偵団」は普段、他のユニットとほぼ活動しないKnightsが共同のドリフェスを行うイベントです。実質的に古豪である彼らが、新顔のRa*bitsに稽古を積ませる意味合いが大きいものでした。

怪盗たるKnightsが仕掛けたお宝を、探偵団に扮したRa*bitsが探し出すという内容で進むこのドリフェス。行動面ではRa*bitsの活躍が多そうに感じるものの、実際はお宝を探し当てないとRa*bitsはステージに立つことさえできません。

しかもお宝の在り処は校内であれば自由かつノーヒント…というアンフェア極まりない内容で。あのKnightsに協力を仰ぐ以上、一筋縄では行かないということでしょう。

リーダーの月永レオが不在の中で、宝の隠し場所を決めたのが瀬名泉でした。そして彼は、やはりと言うか何と言うか、こういう時に手加減してくれるような男ではありません。

絶対に見つけられないような隠し場所を選び、Ra*bitsを全力で潰しにかかります。これによって彼らはほぼ活躍の機会を奪われかねない状況でした。

しかし瀬名は決してRa*bitsのことを何も考えていないわけではありませんでした。むしろ、彼は彼なりにRa*bitsに成長してほしいと思っていて、そのためにあえて最も痛めつける行動を取っています。

ここまでのストーリーなども加味して考えると、瀬名はあくまでも他人のことが好きなように思います。悪態は吐きつつも、行動には常に前向きな感情が伴っています。

ただその表現方法にかなり問題があるタイプ。
今回の件は「ライオンの親が子を崖の上から突き落とす」ような話です。そのやり方自体は古来から言い伝えられている通りに、一定の正当性があります。

その中で瀬名が抱える問題とは、言うなれば「突き落とした子が死んでしまっても問題ない(仕方がない)」と思っているように見えること。絶対に死なないように加減することを彼はしていない(できていない?)イメージがあります。

彼は「壊れるのを見たくない」とは言っているので、最終的には良い結末になることを望んでいるのは間違いありません。ですがこのイベントの中では「生きていてほしいと思っているが、生かすとは言っていない」といったニュアンスで行動している。そのように感じました。不器用にもほどがある。

他者を尊重した調整役

その状況を加味して、裏でRa*bitsに手を差し伸べたのが鳴上嵐でした。このままでRa*bitsは本当に何もできないまま終わってしまうと考えて、彼らへのアシストを試みたのです。

とは言うものの、それは確実なヒントでもありません。逆にRa*bitsをより迷宮入りさせてしまう可能性もある行動でした。ただ何もしなければ彼らが答えに辿り着くことはなかったでしょう。

重要なのはこの手の差し伸べ方が、瀬名泉のやり方を尊重するものであるという点です。

彼は瀬名泉の"やりすぎ"をフォローしようとしていますが、そのやり方自体に否定的ではありません。瀬名のことを心から責めるような描写もありません。

あくまで瀬名泉の行動を上書きしない形で、バランスだけを上手く調整する。単純に助けるわけではなく「助かるかもしれない」を残す。それが彼の取った行動の意味でした。

だからなのか、瀬名は嵐を必要以上に糾弾しようとしません。裏でコソコソ動いていたことに思うところはあるものの、それだけです。これが自分の思惑から大きく外れるところまで話を作り変えてしまっていたら、もっと露骨に不快感を表に出す男だと思っています。

ただ瀬名は実際に嵐の話を聞いたわけではないので、事の詳細については分からないはずです。つまりその辺りの調整については、瀬名も嵐のことを信頼しているということでしょう。

Knightsの中でそういう関係として自然に成立するようになったのか、それとも過去の経験からこういう関係性が生み出されたのか。それはまだ分かりません。

しかしまた彼らの中にある少し不思議な信頼関係の一端が、垣間見えたような気がしました。ねっちょりしてますねぇ。

真白友也の可能性

それでは今回の主役、真白友也くん個人について拡げましょう。

夢ノ咲学院のアイドルながら目立った長所がなく突飛な個性もなく、立ち振る舞い、見た目、名前に至るまで何もかもが"普通"の少年。その"普通"さに頭を悩ませている少年です。

実際アニメでも最も影が薄いキャラクターであったのはほぼ間違いありません。そもそも出番が控えめだったRa*bitsの中でも、表面的に心に引っかかるものを持たない存在で「なんかもう1人いたような…」という印象に留まっている期間が長かったと思います。

この「"普通"であることに悩む」という要素は非常にキャラを魅力的に移す"個性"ではあるものの、その実、軽く触れておくことがかなり難しいものでもあります。少なくとも他のキャラが超個性を持っていることに実感を持てないと、それが"個性"に見えることはないからです。

その側面から、アニメでの友也はあくまでも"普通"=印象に残らない存在であることに重きを置いた活躍に留まったのだと考えます。そして逆にその事情があるからこそ、原作で友也に触れた際に、彼のその"個性"はより強い印象となって僕の心に刻まれました。

アニメ単体で見ると寂しい活躍ではありますが、アニメを原作への間口と考えるなら友也はこれで良かったのだろうなと思います。

しかしながら、彼はただ"普通"の自分を憂いているだけではありません。そこから脱却して1人のアイドルとして輝けるよう、人一倍努力を積み重ねて行くことができる熱意と根性を持っています。

「努力できる」というのは紛れもなく人に与えられた才能の1つ。そしてそうできるものと出会えることもまた、とても幸せなことです。

どんなに努力できる人間でも、気が進まないものには立ち向かえません。どんなに才能があっても、努力できなければ成果を上げることはありません。

彼はその両方を持ち合わせているからこそ、"普通"の才能しか持たないにも関わらず、他のメンバーに引けを取らない形でアイドルとして在れるのだと思います。本人はなかなか実感できないものですが、それは周りから認められていい彼の長所です。

若干15歳の身で過労で倒れるというだけで、本当に極限までの努力を重ねていることが分かります。それは"普通"の人間にできることではありません。

そして極限まで努力ができる人間は、自分の「やりたい」と思ったことであれば、何でも人並み以上の成果を出せる可能性を持ちます。

社会で生きていくのに大切なのは、結果であって中身ではない。「アイドルとして活躍できる」という結果を手に入れられるなら、彼がその才能を持っているかどうかは周りが決めてくれることです。

努力嫌いの1人の人間としては、心底羨ましいと思ってしまう才能を友也は持っています。隣の芝生は青く見えると言いますが、なかなか自分の持つ才能には気付けないものなのかもしれません。

見る目がある者

"普通"であることにコンプレックスを抱き、"普通"からの脱却のために凄まじい努力を続けることができる友也。

元を辿ると、彼が自分のことを「"普通"である」と認識できること自体もまた才能だと言えます。

そもそも"普通"とは他者と比べた自分の立ち位置の話であり、周りの状況によって何が"普通"かは変化するものです。その点、夢ノ咲学院という超個性の集まりの中では、彼のようなタイプを一般的="普通"と呼ぶことに違和感はありません。

しかし、それを彼自身が適切に認識できるかはまた別の問題です。

例えばその差を周りと比較して「劣っている」と感じるのもまた正しいですし、意固地になって認めようとしない選択を取ることも自然です。その中で彼はわざわざ自分を"普通"だと評価していて、それは第三者から見た評価とも概ね一致するようです。

このことから、友也は自分の能力を客観的に正しく評価することができるし、また転じて周りがどのような人間であるかを正確に見定める能力も持っていると判断することができます。

簡単に言えば「見る目がある」のです。
他人に対しても、自分に対しても、です。

今回、物語中で「探偵の才能があるかもしれない」と自分で言っていますが、実際にあるのだと思います。自分と周りの立ち位置や状況を正確に判断して評価する。そういったことをドライに突き詰められる人間だからこそ、見える世界があります。

これは他人にどう見せるか、自分が他人からどう見られているかという視点にも直結していて、「他人を喜ばせるために行動する」エンターテイナーにとって非常に重要となる才覚です。

そして何となくですが、渉は友也のこういった才能を買っているし、危ぶんでいるのではないかと感じました。

では、次の項で渉と友也の関係性について見て行きましょう。

"日々樹渉"が望むもの

「人類は二種類に分けられるのです、『日々樹渉』と『それ以外』にね……☆」

そう豪語する夢ノ咲の奇才 日々樹渉。
今なお三奇人に一角に名を連ね、その中でも圧倒的な存在感を発揮する『あんスタ』屈指の変人キャラクター。

一見すると"普通"である真白友也とは正反対の存在です。しかし彼にもまた抱えている過去がありました。

拾い子として老夫婦に育てられ、周りからいっぱいの愛情を受け取っていた渉。感謝と恩返しの意味を込めて、彼はその溢れんばかりの才能を周りの人のために使うことを選びます。

生まれながらにして"普通"ではいられなかった彼は、その穴を埋めるための何かを求めていたのかもしれません。そしてそうやって期待に応え続けることが、彼にとっての"普通"でもありました。

いつしかそんな"日々樹渉"が当たり前になっていって、周りの"普通"はどんどんとレベルの高いものに変容して行く。渉にとってその"普通"を維持することは、簡単なことではなくなってしまいました。

"普通"が周りと比較することで初めて生まれる価値観ならば、そうあり続けるためには努力しなければなりません。

刻一刻と変化して行く周りに合わせて、自分もまた同様に価値観と能力をアップグレードして行く。それができなければ、"普通"はあっという間に"劣等"に変わります。

求められている場所で、求められている行動を。
その適切性を見極められる者しか、"普通"であることはできません。

友也が"普通"の存在であり続けることができるのは、彼がその適切な努力を続けることができるからです。そして渉もまた、その能力を同様に持つ者だったのでしょう。

けれど不幸なことに日々樹渉は天才だったから、その期待の遥か上を超えて行くことができてしまった。皆に合わせて努力してきたはずの渉は、最後にはその頭上を高く高く飛び越えて、誰からも理解を得られない存在へと変貌したのです。

愛おしい故に

その基準を下回ってはいけないが、上回りすぎてもいけない。それが"普通"です。自分と同等のレベルで、同様に苦楽を共にできる者以外を認めない。多数派である自分達が正しい。そう思い込むのが"普通の人"という生き物です。

日々樹渉は真白友也に出会った時、きっと彼が至って"普通"の存在に見えたのでしょう。さらにそれが彼の努力の賜物であることも、理解できる立場でもありました。

だから彼がその自分の立ち位置を理解した上で、「"普通"を超えたい」と考えていたことを『危うい』と渉は感じました。その壁を打ち破ってより高いところに行こうとすることが、思いもしない大きな不幸を招くことになるかもしれない。その実感を持っていたからです。

結果として友也は自分のように何かを超えていく才能はなかったわけで、どれだけ努力してもそうはならないと確信を得ています。けれどそれでもめげずに無謀な努力を重ね続ける彼のことが、日々樹渉はどうしても愛おしい。

偏屈で人智の及ばない発想をする日々樹渉に憎まれ口を叩きながらも、決して離れて行こうとはしない友也。才能がないながらも必死にその現実に立ち向かう彼は、あまりにも世界の在り様を知らない。その姿に、在りし日の自分の姿、別の可能性を幻視するのかもしれません。

そんなか弱い彼を自分が守ってあげなれば。庇護の元で今ある幸せを失わないようにしてあげなければ。そう思っている裏側では、頑張る彼を育ててあげたいという感情も持ってしまっていた。

結局はそのバランスを間違えて、友也は過労で倒れてしまいました。仕方がありません。彼は"日々樹渉"ではないのだから、常軌を逸した"普通"について来れるはずがないのです。

付いて来てくれるのなら、ついて来てほしい。そう願っても。渉にとってやはりそれはもう、叶わない望みになってしまっている。それを望むことが、大切な存在を傷つけて壊してしまうことにさえなりかねない。その現実だけが、彼の前にまざまざと突きつけられました。

ともすれば"日々樹渉"が取れる選択は、「距離を置く」ことしかない。

彼を見放して去ることだけが、自分が彼にできる唯一のこと。少なくとも、渉はそう考えているようでした。

"普通"と"天才"

でも、友也はそう思いません。
そんな渉の複雑な感情を理解せず、あくまでも"普通"の読み取りで偉大な先輩の言葉を解釈します。

何だかんだ言いつつも、真白友也は日々樹渉のことを尊敬しています。人格はどうあれ、エンターテイナーとして自分にないものばかりを持っている。ついて行くに足る存在だと思うからこそ励むのでしょう。

より優れた者のそばで鍛錬を積めば、"普通"の人間でも大きく成長することができます。天井は高ければ高いほど、見えないほどに上空にあった方が良い。限界を知らなければ、人はそれに向かってどこまででも努力できます。

そんな終わりの見えないものに挑むことを、多くの人は恐れて忌避してしまうものです。だからこそそれができる友也は、精神性において"普通"を明らかに逸脱した強さを持っています。

どれだけ身体と能力が科学的に見て"才能ゼロ"であっても、彼はそれ以上のものを得るために挑戦することをやめない。それが幾ら分不相応な望みであっても、彼はどこまでも日々樹渉に食らいつこうとするでしょう。たとえ渉の方から、彼を手離そうとしたとしてもです。

その人間性を持って、彼は日々樹渉の寵愛の対象に値する。渉が望んで欲して諦めていたものを、友也は体現できる可能性があるのだと思います。

今はまだ小さくて弱々しい存在に過ぎないけれど、きっといつかはその身体に触れるくらいのところまでは上がって行ける。その決意は、他の者が口にするほど軽率で愚かなものではない。

"普通"の少年が努力によって、"天才"の気持ちをわずかに動かした。

そんな先への可能性を感じさせてくれる物語でした。

おわりに

「対決!華麗なる怪盗VS探偵団」は新しく見えるものがとにかく多いストーリー。感想をまとめ上げるのは大変でしたが、その分充実した体験でした。

特にアニメ当時から気になっていた日々樹渉の過去(※ただしどこまで本当の話かは不明)が明かされたのにはやはりグッと来てしまい。気持ちに応える形で筆もしっかりと乗ってくれて、書いていてとても楽しかったです。僕だけでなく、皆さんにご満足頂ける内容になっていると良いのですが。

『あんスタ』のストーリーはどんどん長くなって混迷して行くとは聞いていましたが、既に実感を始めております。

積み重ねを考えれば文字通りまだまだ"序の口"だと思います。ストーリーが長くなれば感想も長くなるのが自然。考えるのは楽しいですが、書き上げるのは相応に大変です。さて今後はどうなって行くことやら。

とりあえず今回はこの辺りで。また次回の記事でお会い致しましょう。それでは。

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