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キンプリオタクの『あんスタ』ミリしら感想 アプリ編⑪「開演 ダークナイトハロウィン」

投稿日:2020年5月21日 更新日:

アプリ『あんさんぶるスターズ!』タイトル画面より

11記事目は初めてのハロウィン。
「開演 ダークナイトハロウィン」です。

このストーリーはアニメの「ハロウィンパーティ」でもメインに扱われたもの。『あんスタ』は1つのイベントの別側面を年ごとに切り込んで行くスタイルで季節イベントを展開していると聞いています。原作を読んだことで『あんスタ』におけるハロウィンの土台となっていることが分かりました。

朔間兄弟を主軸に展開されたこの物語。
アニメ勢の僕としても既知のストーリーではありますが、改めてこの「ダークナイトハロウィン」を読み解いていきましょう。

アニメと原作における零の印象差

今回も前記事同様、アニメで展開された部分については多くの部分で印象を共通しています。なのでアニメ編の「ハロウィンパーティ」の記事をお読みでない方は、そちらを読んだ上でこの記事を読まれることを推奨します。

キンプリオタクの『あんスタ』ミリしら感想 第21話 アイドルと兄弟 想いが交わるハロウィンの夜

その上で今回はこの「ダークナイトハロウィン」の構成について、アニメと原作の質感の違いを見て行こうと思います。

この物語は朔間兄弟の確執と和解の一部を描いた物語で、アニメでは朔間凛月の感情をメインに取り扱った物語として描かれました。また、原作における表題ビジュアルは凛月であることからも、最初から彼をメインに考えられたストーリーであったことに相違はないようです。

ですが実際にこの物語を読んで行くと、この「ダークナイトハロウィン」の中心に座っている人物は朔間零の方だと感じました。

活躍キャラも2winkとUNDEADが主軸であり、Knightsは絡んでくるもののあくまで零と凛月の中継ぎ役に留まっています。台詞量なども明らかに凛月の方が多いですが、全体を通して陰ながら存在感があるのは零の方だなと思います。

これは恐らく、原作の零はアニメよりも「何を考えているのかよく分からない」ことが影響しているのではないかと考えています。

と言うのもアニメの零は全体的に、年長者としての威厳やオーラある部分がフィーチャーされている印象でした。何だかんだ"カッコイイ"が先に来るキャラで、正しく老獪と呼ぶにふさわしい存在でした。

一方で原作の零はふざけた台詞の量が圧倒的に多く、その印象はどちらかと言うと"おじいちゃん"です。もちろんカッコイイところもあるのですが、比率で言えば「ちょっとボケが入っているのではないか」と思えるような台詞が中心です。

結果的に朔間零は何が本心なのか見通し切れないキャラクターになっていて、これがこの「ダークナイトハロウィン」全体の空気感に影響しています。

過去の情報があるかないか

なので、全体を通して「裏で朔間零が何かを画策しているようだ」という感覚が常に付きまとう状態で、登場人物の零との関係性の深さも相まって、常に彼の存在を意識させられる物語になっています。

それを踏まえた上で聞く零が最後の凛月に語りかける台詞は、さぞ当時の読み手の心を惑わしたことでしょう。

あの台詞群はアニメでもそのまま採用されていましたが、アニメでは「エレメント」が先行展開されていたことで、零の俺様モードが先出しされていました。原作でも晃牙の口から零の過去が少し語られてはいますが、口伝の情報と実際に見ているのとでは理解度が変わります。

零の過去の姿を事前知識として持っている状態であの台詞を聞くのと、本当に何者か分からない状態で聞くのでは受ける印象が全く違うはずです。

さらにそこから朔間零というキャラクターの不確定性が加味されるとなると、この「ダークナイトハロウィン」は朔間零への多大なる謎ばかりを残して終了したに違いありません。

もちろん朔間兄弟が互いに互いを想い合っている兄弟であることは明確に分かるのですが、とにかくこの物語に至るまでの過去背景が謎すぎて「で、結局どういうことですか?」と終わった後に思ってしまう。そしてそれがよりキャラと物語に興味を持たせる仕掛けになっているようです。

「何か解決しているような感じがするが、正直よくは分からない」といったところ。この独特な読み味は他のイベントにはないものです。この後味が良いような悪いような何とも言えない感じこそ、確かに"ダークナイト"と言えるかもしれませんね。

凛月の兄に対する態度の違い

もう1点見ておきたいのは、凛月から零に対する矢印の大きさです。

アニメの凛月は零に対する強い拒絶を示していて、自発的に零の話をすることはありませんでした。物語慣れしていると「何だかんだ兄のことが好きなんだろう」と感じられはするものの、そこに明確な理由はない状態でハロウィンを迎えました。

原作の凛月はここがかなり異なっていて、彼はむしろ積極的に兄の話題を出しています。嫌いだムカつくと言っている割には自分から零を話の中に登場させており、「聞いてもいないのに兄の話をしている」ことが非常に多い印象です。

だから原作の凛月は、ここに至るまでに「こいつお兄ちゃんのこと、本当はすごい大好きだな」と誰が見ても分かると言っても過言ではないキャラクターでした。実際「ハロウィン」でも、彼の台詞によって常に朔間零の存在がチラついている節もあったと思います。

アニメは兄弟のいざこざをより強調した形で見せたことで、2人の関係性は比較的分かりやすい形に収まっていました。これは前述の通り、アニメでは零の過去がある程度分かっている状態だったことが考慮されたのではと考えています。

「ハロウィンパーティ」視聴に辺り、零と凛月、双方の立場や言い分に我々が理解を示せる状態だったからこそ、2人のぶつかり合いの多様性を感じることができました。凛月が激情をぶつけたことによって、短い時間でより分かりやすく彼らの関係性が伝わってきたのです。

ところが原作の感覚では凛月がそこまで怒っているようには見えず、彼なりに兄に対して不快感を示しているといった程度の印象に留まっています(演出の限界はあるのかもしれない)この物語から感じられる朔間凛月は、兄のことを烈火のごとく怒鳴りつけるような空気感ではありません。

そこにアニメと原作の印象の差はあると思いました。

しかし「ダークナイトハロウィン」は『あんスタ』の始まりに当たる物語の1つであり、2ここから彼らはたくさんの物語を(現在進行形で)積み重ね続けている状態。当時ここで全てを見せる必要もなければ、今ではこの時には出来上がっていなかった一面もたくさん存在しているはずです。

2015年以降の長い道筋が確定している状態で創られた2019年作のアニメでは、その間4年間に生まれたより多くの面を見せるための工夫が存在しているのかもしれないなと、この「ダークナイトハロウィン」で改めて思いました。

今回活躍したキャラクター達

では、今回登場したキャラで気になった点を少しだけ拾って行きます。

大神晃牙

UNDEADでありながら凛月のクラスメイトでもあり、今回は色々な人達の間に立ってくれた影の功労者。アニメと比較しても出番も台詞も多く、印象的な活躍も多かった晃牙くん。

凛月の変化に気付いたことについて「鈍感な俺様でも気付くくらい~」と言っていましたが、どちらかと言うと彼は敏感な方だと思います。

割と他人の変化に気が付くと言うか、イメージ的に「もしかして」という可能性を想像して、周りのことを慮ることができる心の持ち主に見えています。変化に気付いて心配しているのではなく、相手のことを心配しているから変化に気付いているタイプではないでしょうか。

零の心境を勝手に想像して「もっと良い形に着地させてあげたい」と思っているところからも、人のことをよく見ているし他人のことを考えるのが好き(得意?)なんだなと思わされます。

音楽に対して真摯だったり、自身のコスプレと狼男の在り方の齟齬を指摘したり、何かと細かいところを気にするし気が回る。見た目と喋り方の粗暴さとは裏腹に、繊細な思考回路が見えるのが面白いですね。

2wink

今回は朔間兄弟の関係性を補完する"兄弟"として活躍。というわけで個人ではなく2winkとして一筆。

2winkにしろ朔間兄弟にしろ、弟が兄に抱えるコンプレックスのようなものが印象的に描かれている『あんスタ』。今回で特にその部分が色濃く出ていたのは、凛月の衣装に対する言及です。

弟という存在は幼少期、往々にして兄のお下がりを着せられる運命にあるため、服装選択の自由とアイデンティティがありません。その結果、成長してから自分の着たい服に強いこだわりを持つようになることも多いです。

兄弟アイドルとなるとやはり衣装を対にすべきだと誰もが思いがちですが、弟であるゆうたに限っては"自分だけの衣装"への執着は大きいでしょう。

しかしより多くの人が求めるものを追求する上で、その感情は結局ただのノイズになってしまいます。ゆうたもそれを理解しているから強く抗議はしないものの…。合わせたがる兄と周りの人間の圧力に屈する"弟"の受難を、ゆうただけが理解しているという状況はなかなか味わい深いものがあります。

実際のところ、凛月もそれについて全く何も思っていないわけではなさそうでした。彼らの存在が朔間兄弟の関係性を補完するところもあれば、対比的に分かりやすく見せてくれるところもあるという感じ。2winkの2人は潜在的にこの物語の理解度を上げてくれている存在だったと思います。

月永レオ

物語序盤で凛月を心配する台詞がアニメよりも非常に長く、思い込みで過剰すぎるほどに心配している姿が見られました。

アニメでは本気で心配しているのか彼なりの愛情表現なのか判断し切れないところがあったのですが、原作では「そこまで心配しなくても」と言いたくなるくらい思いっきり心配していたのが良かったです。

キャラクター的に、ああいう場でもふざけて自分の道を突き進みそうな空気感があるレオ。他人の情報に言うほど興味がないくせに、身内に対する"愛情"だけは激重というのがよく伝わってくる一幕でした。

と言うか周りからの矢印は受け付けないのに、周りに対する矢印は弩級の大きさと重さでぶつけるきらいがありますね。それが過去にどんな不幸を招いたのやら、です。

おわりに

『あんスタ』の季節イベントはユニットの枠を超えた多種多様な関係性が描かれるストーリー。

「ダークナイトハロウィン」もアニメで見た物語ではありましたが、細かいところでは感じ方に差があるというのが興味深かったです。それだけこの作品が多くの複雑さを抱えているということでしょう。

2015年も後半に入り、徐々に深めの話が増えてきたなと思います。この年で執筆予定のエピソードは少なくなってきました。この2020年現在にいつまで2015年の話してんだという感じではありますが、深まっていく作品の味をより楽しんで行こうと思います。

次回以降もお付き合い頂けると幸いです。それでは。

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