あんさんぶるスターズ!

キンプリオタクの『あんスタ』ミリしら感想 アプリ編④「スカウト!ヒーローショウ」

2020年4月7日

引用元:『あんさんぶるスターズ!!Basic』「スカウト!ヒーローショウ」

『あんスタ』イベスト感想執筆、2つ目に取り上げますのは「スカウト!ヒーローショウ」です。あの流星隊の最初期が描かれたストーリーを取り上げます。

「スカウト!シリーズ」はガチャで特定のカードを入手・育成した際に解放されるストーリーのようですが、こちらは『ズ!!』リリース直前「ストーリー無料解放キャンペーン」の中に含まれていました。それだけ彼らにとって重要度の高い物語である、と受け取っています。

初期だからこそ見える曖昧な関係性を読み解きました。今回もお楽しみ下さい。

まだチグハグな流星隊の姿

流星隊はアニメの当番回「スーパーノヴァ」で全員について軽く触れられています。アニメ新規の僕の持っている彼らへの印象、情報はあの回に描写されたものがほぼ全てということになります。

アニメ「スーパーノヴァ」はキャラの表面的な要素についてはしっかり拾ってくれていたと思うので、今回の「ヒーローショウ」を読むに当たっても取り分け困ることはありませんでした。むしろ、アニメはこの「ヒーローショウ」の内容を踏まえた上で再編集されたものであると感じました。

原作的には順番が前後しますが、「スーパーノヴァ」も遊園地でショーを内包したドリフェスを行う内容でしたし、しっかりと前後の繋がりを感じる内容に。この「ヒーローショウ」を先に行っていたことを知った上で見ると、また「スーパーノヴァ」の感じ方にも違いが生まれることでしょう。原作で読むのが楽しみです。

序盤ということもあり、この「ヒーローショウ」では、まだ流星隊が非常にチグハグな関係性であることがしっかりと描写されています。

アニメでも流星隊はそれぞれに事情があって"成り行きで合流した者達"であり、流星隊になりたくてなった者ばかりではないことが語られており、「スーパーノヴァ」はそんな彼らが流星隊として団結して行く姿が描かれていました。

「ヒーローショウ」は言うなればその前段階。
「まだ流星隊というユニットのことはよく分からないし、現状に納得しているわけではないけれど、まぁここにいることは嫌ではない」。そんな前向きとも後ろ向きとも言い切れない、微妙な心持ちで関係性を紡ぎ上げて行くメンバーの姿が魅力のストーリーです。

理想と現実の狭間にいる時、何が自分の本当の気持ちで何に向かって自分が歩んでいるのか、なかなか自分では分からないものです。そこの折り合いをつけるのにはどうしても時間がかかります。

「嫌ではない」なのか「良い」なのか。
その曖昧さを意識し、理解できた時に初めて人は次のステージに進むことができると思います。

その過渡期でもがき苦悩する姿は、関係性が構築される前の序盤だからこそ出せる持ち味。そしてこのようなストーリーの存在が、後に感じるカタルシスをより鮮烈で濃密なものにしてくれるでしょう。

守沢千秋のキャラ性

このストーリーで個人的に最もチェックしておきたい部分は、守沢千秋の言動です。

アニメにおいても千秋はただの熱血漢でないことを匂わせる描写は存在しましたが、「ヒーローショウ」ではその部分がより分かりやすく語られており、多くの人が「過去に何かあったのだろうか?」と感じられる台詞回しになっています。

特に後半ではあんずに対して弱音を漏らすシーンが存在。アニメでは弱音を吐く姿は一切描写されていないため、かなり新鮮に見えました。きっとどこかでそういった姿が見られるだろうと思ってはいましたが、ほぼ初期の時点で提示されていたのは純粋に意外でした。

ただ話の内容自体はリーダーとして苦悩し、メンバーを慮る心優しい千秋その物で、彼の心中に眠っていたものはアニメで感じ取ったものから相違ないと言ったところ。キャラの印象に差はないものの、キャラ性提示のし方(ストーリーの流れ)が自分の想像と違ったという感じです。

これは「白と黒のデュエル」と同様に、あんずとアイドルの会話シーンがアニメよりも濃密に描かれていることによる違いでしょう。千秋が弱音を吐ける相手がいるとしたら、この時点では完全な部外者と言って良いあんずくらいでしょうし、彼女との会話としては自然です。

このエピソードを知っていると「スーパーノヴァ」であんずにドリフェスの企画書作成を手伝ってもらったことにもより納得感が出てきます。ただ猪突猛進していただけなわけではないと、説得力も増してきます。

病人から一見ほほえましい「彼女ができた時の夢」を語りだされた時のあんずの顔を想像するとこちらの顔も歪むものですが(現実感が強すぎる夢なせいでちょっと不気味)、そのどこか"何も気にしない自分を努力して演出している"ようにも見えるまっすぐさが、守沢千秋のキャラクター性だと思います。

序盤の時点で、熱血キャラにしては何となーく違和感がある。この話で千秋が気になってしまった人も数多くいそうな印象です。

原作のあんずは戦う

余談ですが、原作のあんずさんは割と暴力的なところがあると言うか、夢ノ咲の個性派アイドル軍団としっかりと対話できる度量があるようですね。

アニメのあんずはどちらかと言うと巻き込まれ女子のようなキャラで一貫していて、健気に頑張っている姿が印象的でしたが、原作のあんずは自己主張もそれなりに強く、果敢に彼らに挑んでいくような描写が見受けられます。

アニメを見ている時に「原作とアニメのあんずは別人」というメッセージなどを頂きましたが、それも少しずつ分かってきたかなと思います。アイドル達の奔放さと戦う彼女を通した物語を楽しんで行けたらと思います。

今回活躍したキャラクター達

では他の流星隊のメンバーについて、一言ずつ触れて行きましょう。

南雲鉄虎

まだまだ紅月にご執心で情緒不安定な鉄虎くん。今回のキーマンの1人でもあります。

理想を追い求めるが故に苦悩する彼。
「思ってたのと違う」という意識が強く、現段階で最も流星隊に否定的な存在になっています。

若ければ若いほど自分の想像の範囲に収まっているものにしか満足できず、それより外にあるものを受け入れられないものです。視野を広く持てば…と言うのは簡単ですが、そのためにまず「視野の拡げ方」を覚えなければなりません。

このストーリーは彼にとってその大きな学びの1つとなる物語。自分の想像の外にあるものから、自分の内側とリンクしているものを見つけて吸収する。その意識を得ることが視野を拡張し、より大きな心を作り上げるのです。その片鱗を「ヒーローショウ」で彼は感じたことでしょう。

「スーパーノヴァ」での彼の成長を少しばかり知っている身ではありますが、もっと鬱屈していた時代をここで知ったことで新たな彼の一面もまた見えることだろうと思いました。

仙石忍

アニメの情報では正直よく分かっていないが、今回も正直よく分からないままだった。

確実に言えるのは新入生組で最も流星隊に肯定的な存在であり、それは初期の時点で定まっていたということ。そしてチグハグな流星隊の中で「そもそも肯定的である」事実の裏には、何か大きな理由がある可能性が高いということです。

アニメで「分からないまま終わるのかな」と思ってそのまま終わった部分ですが、原作を追いかけていれば「いつかは分かる」ことです。今回は彼が中心の物語ではないということで、今はまだ置いておきましょう。でも思っていたより忍者。

高峯翠

アニメ「スーパーノヴァ」で提示されている情報よりも今回語られた情報の方が少なかったので、彼についても今のところ大きな進展はなしというところ。

全体的にダウナーで活動にも否定的、鉄虎のように葛藤もないように見える彼。かと言って強く拒否することもなく、流されるままに流星隊の一員として努力する。このストーリーではまだそれだけのキャラクターです。

原作をプレイして無類のゆるキャラ好きであることが分かり、今回はその部分が少し掘り下げられていましたね。

すごくネガティブなキャラクターであるものの偏屈ではなく、分かりやすい思考をしているので見ていて不快ではないのが良いところ。悩みの方向性が共感できるようなものだからなのも大きいかも。

突出した個性があるわけではないですが何となく眺めていたくなるキャラで、結構注目しています。アニメでチラッと見えた葛藤が掘り下げられるエピソードを読むのが楽しみです。

深海奏汰

ぷかぷか三奇人。
アニメでは千秋以外の流星隊メンバーとの絡みを見られなかったので、早くも新鮮なやり取りが。

自分を持っていないようで、流されるままに生きているようで、実は根元にはしっかりとした芯がある…ように見える彼。

今回のお話ではそんな"柔軟"と言うべき彼の掴み所のない生き方が、鉄虎の感性に大きな影響を与える役割を果たしました。

何かを貫くことと意固地であることもまた異なった価値観。周りに合わせて柔軟に立ち回りを変えつつ、自分以外のものを尊重しながら自身を確立することもできるのです。

その場に合わせた立ち回りで、自分の人生を豊かにする。鉄虎がその可能性に気付けたのは、きっと奏汰と会話をしたおかげでしょう。

その生き方は海に漂うクラゲや、常に揺られながらも1つの場所から動かない海藻を想起させるもので、彼の好きなものは生き方にリンクしています。そういう人間だから好きになったのか、海の生き物が好きだからそういう人間になったのか。想像するのも一興ですね。

おわりに

「スカウト!ヒーローショウ」は流星隊の始まりの物語。
全体的にチグハグながらも、それぞれの前向きな意志が少しずつ良い方向へとユニットを変えていく。その可能性が示唆されたストーリーでした。

やはりあんずとアイドル達のやり取りによって、アニメでは全く見えなかった一面が見えるのが原作とアニメを比べて楽しむ醍醐味だなと思います。

男友達と会話する時と女の子と会話する時の印象が全く異なる人は現実でもいますし、「おぉ女の子相手だとこういう感じになるのか君は」と思えるのがなかなか面白い。

まだまだ新しく知ることより「アニメと対比して」という見方が大きいストーリーが続くだろうと思います。その辺りを意識しながら楽しんで行こうと思います。それでは。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。美少女よりイケメンを好み、最近は主に女性向け作品の感想執筆を行っている。キャラの心情読解を得意とし、1人1人に公平に寄り添った感想で人気を博す。その熱量は初見やアニメオリジナル作品においても発揮され、某アニメでは監督から感謝のツイートを受け取ったことも。

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