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キンプリオタクの『A3!』ミリしら感想 第14話 「ふぞろいなバディ」誕生 相反する2人の可能性

投稿日:2020年10月24日 更新日:

個性がバチバチと火花を散らす波乱の秋組。

今までにない角度から演劇の魅力を感じることができそうで、大きな期待感を覚えながらアニメの視聴を進めています。

14話では秋組の最も大きな問題にして、最も突出した存在である摂津万里と兵頭十座の関係性がフィーチャーされる物語に。

周りを酷く引っかき回しながらも、どこか憎めないでこぼこコンビ。彼らの描く物語の形に迫って行きましょう。

古市左京の聡明さ

春組夏組と若い世代の座組が続いたことで、どちらかと言うと学生演劇の色味が強く現れていたMANKAIカンパニーの座組。

秋組では年長者たる左京の参加によって、運営などを含めた観点で動くことも増えて行くようです。

まずは14話では、その中核となっていくであろう古市左京について追って行こうと思います。

演劇というコンテンツを語る上では、お金の問題は決して軽視できない問題です。舞台を突き詰めれば突き詰めるほど収支が見合わなくなるという現実があり、大舞台を満員にしているのに何故か赤字ということも珍しくない業界だからです。

特に『A3!』は解散寸前の劇団を再興することを目的に始まった作品。まずは「劇場を満員にする」という目標だけを満たすことが先決でしたが、それがクリアできる下地が整ってきた以上は、収益を安定化させる素地も作り出さなければならないでしょう。

「とりあえず」で1年やり切ってしまうと、劇団のやり方もある程度固まってくるもの。それがてんで利益を出せないやり方だった場合、そこで改めて是正をかけなければなりません。体制の見直しは、後になればなるほど気力と体力を削ぐ重労働となってしまいます。

全てができ上がる前である今の内から「正しいやり方」を身に付けておいた方が、後からやり直すよりはずっと楽で確実です。

左京がこのタイミングで「運営方針」の話を先行して行ったのは、そういった先のことを見通してのことではないかと感じます。

特に秋組は何かと問題が多そうなメンバーが約2名ほどいるのもあり、野放しにする時間が長いと余計に厄介なことになりかねません。それも含めての対応だった、と考えるのが妥当でしょうか。

秋組スタートの立役者

左京は劇団の運営面についてだけでなく、座組の展開についてもその聡明さを発揮しています。

リーダーの任命でも先を見据えた判断をいづみに要求し、感情で押し付けることなく確かな説得力でそれを納得させました。声を荒げるシーンが目立ちますが、実際はしっかりと自身のことをコントロールしてる振る舞える良い大人であることが分かります。

おかしいと思うところはしっかりと意見を言い、それを踏まえた上で監督が判断することには異を唱えません。また無自覚にリーダーになった万里のことも邪険にせず、その自覚を持たせようと適切な応答を行おうとするなど、やはり「リーダーを立てる」という意識が人一倍強い人間のようです。

今回は物語の至るところで左京の発言と判断が転換となっており、全体のまとまりを作ってくれていたのは間違いなく左京でした。

万里と十座がメインで活躍できるような進行と空気を生み出したのも彼であり、14話では「主役を立てる脇役」として一番大きな仕事をしてくれていたと思います。

1つ1つ彼の発言や行動を見て行くと、本当に上手く立ち回ってくれているのが分かって小気味良い。実質的に秋組が事故らずに開幕を迎えられたこと自体、古市左京の存在のおかげでしょう。彼がいなかったら万里と十座の関係性が発展することもなく、座組全体が自爆したかもしれません。

左京は個人的には結構な注目株。今後もこういう一歩引いた位置から全体をコントロールするアドバイザーとしての活躍が主となるのか、はたまた大胆な大立ち回りを見せてくれるのか。どちらに転んでも良いキャラになってくれる気がします。

社会の厳しさと組織で動くことの難しさを知っている彼だからこそできる、他のキャラにはできない動きに期待しています。

摂津万里の人間性

では次に、14話ではメインでの活躍となった摂津万里の人間性について紐解いて行きましょう。

メインでの活躍となった万里ですが、キャラとしては左京に指摘された「その程度で全能感を感じられるのは、向上心がないからだ」というのが今の彼の全てという印象。

全力を出さなければ「俺はまだ全力を出していないだけ」と言い逃れ続けることができます。けれどそれは「全力を出してもできないかもしれない」というリスクから逃げ続けていることに他なりません。

さらに万里の場合、全力を出さなくても"そこそこ"の結果は出すことができます。彼はそれを「何でもできる」と思い込んでいる状況にあるとのことです。

そう思えるのはひとえに、彼が自分より下の存在にばかり気を向けているからでしょう。

世の中の大抵のことは、上から4割程度に入るまでは誰でも頑張れば到達できるもの。中には大した努力をせずにそのラインに至れる要領の良い人もいるでしょう。万里はきっとその中の1人です。

そのレベルでも、比率で言えば「できる人よりできない人の方が多い」のが現実。上を見なければ相当な数の人間が、半分より下にひしめいているのです。

言うなれば万里は、その半分より少し上の位置から下ばかりを眺めているということ。

ですが人生で真に難しいのはそこからです。
上位2割に入るには相当な努力が必要で、そこからさらに才能ある者しか1割以内には入れません。当然1番を取るのは"そこそこ"の結果を残すより何億倍も大変でしょう。

それにチャレンジせずに「何でもできる」と自信満々に言い張れるのは、上を知らない・見ていない証拠です。上を知っていればいるほど、人はどうしても「自分なんてまだまだ」と言いたくなってしまうものですから。

"そこそこ"が仇となる世界

万里の"そこそこ"の人生は、別に全否定されるべき生き方ではありません。

むしろそれで生きていけるのなら、その方が幸せです。彼の言う通り、イージーモードで人生を楽しむことができるんですからね。

しかし万里は演劇という表現力が必要な世界に飛び込んでしまいました。そして演劇はどんなに要領の良い者であっても、決して"そこそこ"で成功させられる活動ではありません。むしろその要領の良さが仇になってしまう可能性すらあるのです。

上述の通り、若者のお芝居に求められているのは「心を動かされる熱量」。それなしに"そこそこ"こなすことは、逆に観客に悪い印象を与えかねない行いです。

「なんか鼻につく」「大して上手くもないくせに気取ってる」など、誰もが何となく感じて言葉にする。

熱意の多寡は、そんな素人でも核心をついた「感想」として評価できる尺度です。玄人のように演技の良し悪しは分からなくても、その人が全力でやっているかどうかは誰にだって分かるのです。

そのように考えると今の万里は、「演技は"そこそこ"」「一切のやる気がない(観客に評価されない)」「上の指示には従わない」と悪いところばかりが目につきます。

つまり今の摂津万里は芝居人として必要な最低限のものさえ持ち合わせていない、ただの使い辛いだけの役者に過ぎません。

万里はまずそこから改善して行かなければ、主役兼リーダーとして満足行く結果を出すことは確実にできないと言って良いでしょう。

これは相当に芝居の勉強を積み重ねてきた者でも、自分自身で真に気付くことができるかは分からないポイントで。「何となくこなしているが、それだけ」という評価に悩む役者は現実にも大勢います。口で言うほど簡単ではなく、頭で分かっていればどうにかできるようなことではないのです。

乗り越えるにはただの稽古ではなく、大きな経験による根本的な心情変化が必須です。彼はそれを短期間でどう学び、克服して行くのでしょうか。説得力のある物語に期待しています。

ふぞろいなバディ

演劇へ並々ならぬ熱意を持つ十座と、彼への対抗心のみで行動してしまう万里。

相対する2人の関係性を改善することが、秋組の目下の課題にして最大の難点でもありました。

「"そこそこ"できる」という理由で主役兼リーダーは万里に決定。実際、急造な座組においては最も実力があって若いメンバーに主演をやらせるのは手堅い選択で、それ自体には一定の理があります。

しかし、主演に熱意がないことは、周りのメンバーの熱意を削ぐことにも繋がります。より万里の精神面の改善は、座組にとっての必須事項となりました。

一方で最も実力がない少年である十座は、逆に最も大きな熱意を持っている少年です。良いところも悪いところも万里とは対照的。実力不足からリーダーに名乗り出る勇気を持てなかったとは言え、その熱意を取り入れるのは重要でしょう。

実際のところ上手い芝居を観たいのなら、お客はMANKAIカンパニーの公演を選ぶ必要はありません。

何かそれとは別の熱量、まだ整理されていない粗削りの輝きを感じたいと思う人たちにこそ彼らのような演劇は求められます。

「中途半端にこなしている」演技には誰の心も動かされることはない。全体的な印象の観点で見ても、万里だけを柱にするのは今の段階では厳しいものがあるのです。

重要な場面で息を合わせられる2人

新興の劇団がその座組唯一の魅力を体現するには、その瞬間においての「最も強い熱量」と「最も大きな実力」が必要になると思います。春組の初演ではそれが咲也と真澄のコンビによってもたらされ、夏組では天馬個人が担っていたという印象でした。

秋組の場合、万里と十座がそのポジションに座っているのは明白です(※左京は辞退したため)そこで脚本家たる綴が見出した形式こそが「万里と十座にバディものを演じさせる」というものでした。

綴はいづみからの指示を受けて十座に大役を与える脚本を書きましたが、そもそも綴が感じていた秋組のイメージが、最初から2人のバディだったように見えました。あまりにも関係性が悪いのでさすがに厳しいと思っていたのを「監督もそう思うなら」とチャレンジしてみたという感じでしょうか。

バディものというとコンビ仲がまず良好なものが想像されますが、実際は犬猿の仲であったり、片方が異様に相棒を好いていたり、突かず離れずの距離を保とうとしたり、どのような関係性でも魅力的な物語を成立させられるジャンルです。

そして脚本の内容とはまた別に、役者同士の距離感や演技の質によっても全く違う見え方をするのがバディものの特徴です。それを踏まえると、彼らのギクシャクした関係性は、こと舞台の上では他にはない魅力に化ける可能性を秘めています

その点については今回、左京といづみが「設定は同じでも状況や環境が変われば演技も変わる」というやり取りをしているのがポイントに。これが恐らく、万里と十座がバディを組むことの意義(※演劇的な面での)に繋がって行くのだろうと思っています。

終盤での珍走劇を見ても、2人は仲こそ最悪なものの決して相性は悪いように見えません。それぞれが忌み嫌い合い真反対な行動を取りながらも、ここぞと言う時の判断は一致させることができる。これは客観的に見ると、「何だかんだ言って仲良いよね」と言われたりする関係だと言えるでしょう。

特に演劇の世界においては、その在り様は大きな武器になり得ます。人間的に不仲であるからこそ、むしろ役者としては噛み合わせが良いと取ることもできる世界だからです。

例えば演じる役柄がいがみ合っている者同士ならば、仲の良さが邪魔になることだってあるのです。実際にドラマ撮影の裏話などを見ていると、役柄の関係性と役者の感情が近いものになるように普段からやり取りする人の話も目にします。

役者の関係性とキャラの関係性が全く別の概念として存在する以上、何より大事なのは「重要な場面で息を合わせられること」に他なりません。

少なくとも彼らはその「重要」を押さえることができる2人である。それはこの14話の手錠生活によって露わになった事実です。

前途多難ではあるが、その分"将来有望"でもある、かもしれない。

そんな「ふぞろいなバディ」はこれからどんな舞台を創り上げて行くのでしょうか。生暖かく見守って行こうと思います。

今回活躍したキャラクター達

それでは最後に、他の今回活躍したキャラクター達について少しずつ触れて行きましょう。

皆木綴

「平気。寝てるだけ」

いや平気ではない。

二度あることは三度ある。四度目も多分ある。「それが彼のやり方だから」で済ませていいほど彼はまだ出来上がっていない。そろそろ誰か気遣ってやっても良い段階に入ったと思いますよ僕は。

茅ヶ崎至

消灯時刻を設定され深夜アニメが見れなくなったことを嘆きながら、夜通しスマホアプリのランキング争いで上位を獲得する大人。

ありとあらゆる廃人系のゲームにのめり込んで結果を出しているようですが、いつ寝ているのでしょうか。と言うか本当に働いているのでしょうか。職種はなんでしたっけ?プロゲーマー?

現状では周りから浮きがちな万里と、ナチュラルに交流を持てる団員というポジションを獲得。物語の主軸に絡んでくるとは思えませんが、まずは打ち解ける(?)相手がコミュニティ内にできるというのは万里にとって大切なことです。新しい居場所になるわけですからね。

そういう意味ではキーパーソンと言えなくもない活躍。さすがはちゃんとした大人…いや「駄目人間同士で波長が合う」ということもあるか…。

立花いづみ

「今とても社会人と思えない発言が…」

おいスマホアプリ原作のアニメ!こちとら遊びじゃねぇぞ!!

伏見臣

料理ができる男!
やっぱりオカン枠!

共同生活する上で「食」は、何だかんだ言ってメンタル・フィジカル共に大きな影響を及ぼす部分。一番疎かにされがちですが、だからこそ一番大事にすべきなのが「食」なんですよね。

今まで基本的にはカレーしか食べられなかったMANKAIカンパニーにおいて、彼が劇団内にもたらした変化は甚大です(※余談だが、毎日全員分のカレーを用意する労力や努力もまた尋常なものではない)

前日からしっかりとメインの仕込みを入れた上で、食べたいものをメンバーに確認して前菜を決める。ただ自分の料理スキルを押し付けるだけではなく、しっかりと相手のことを考えて献立を考えられる敏腕主夫でもあある(主夫?)

今回はそういった役割的な部分を見せたところまで。役者としてや個人の感情がどうなって行くは次回以降、ですね。

七尾太一

今回はほぼほぼ活躍なし。
一成とキャラ被りしていることもあり、何かと空気に飲まれがちな秋組最年少。

メンバーなので別個の項目を設けていますが、今回は本当に「新しく分かったことがない」という感じ。その分、何かを蓄えてくれているのでしょう。

「何もしていない」というのはそれはそれで存在感があるもの。

まだまだこれからがたくさんある太一くん。当番回に期待しましょう。

おわりに

主演とリーダーも決まり、座組としての第一歩を踏み出した秋組。

台本も完成して稽古もスタート。これから舞台人としてどのような活動を見せてくれるのか、楽しみです。

春組夏組でもギクシャクした関係はあったものの、よりその部分を煮詰めて深めた関係性となっているのが秋組です。相応にトラブルだらけの稽古風景が予想されます。

舞台は人間関係によるトラブルが風物詩と言ってよく、稽古開始から本番までの数ヶ月の間に本当に色々な軋轢が生まれては深まって行きます。概ねそれを引きずったまま公演を終えるため、根本的に解決することは滅多にありません(無慈悲)

ですが逆に言えば、それだけ深い交流を行わなければならない活動だということ。そしてそれは今の関係性を新たな形へと発展させる可能性も秘めているのです。

『A3!』はそんな演劇のリアルな闇に触れながら、最後には光を得る物語をしっかりと見せてきてくれています。秋組の初回公演も、きっと同じように感じられるラストを迎えてくれることでしょう。

その未来に想いを馳せながら、一話一話の感情を読み取って行こうと思います。

それでは今回はこの辺りで。また次回の更新でお会い致しましょう。

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