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キンプリオタクの『A3!』ミリしら感想 第10話 皆のために自分のために 向き合うべき自身の在り方

投稿日:2020年6月13日 更新日:

いよいよ10話の大台に。
残り話数も少なくなって参りました。

合宿でより一層の絆を深めた夏組は公演に向けてより核心に迫った稽古へと挑んで行きます。

分かり合えたところもあれば、これから深めて行くこともある。まだまだ発展途上である彼らのコミュニケーションを今回も見て行きましょう。

よろしければお付き合いください。

鹿島の果たした役割

概念としての演劇ではなく、技術的な面をしっかりと追いかけて行く夏組の物語。今回は春組にも喝を入れた鹿島が登場です。「春組よりは多少マシ」と評された夏組には、より深部への追求を伴った指導が行われました。

特に印象的なのは、最も実力があるはずの天馬が「一番問題がある」と指摘されたところでしょう。

芝居とは技術以上に"持ち味"が重要となる場面も多く、天馬の積み重ねてきたものはコメディに全く合っていなかったというわけです。

同じ役者として励む者からすれば、最も技術がある者はどんな状況でも尊敬に値するものです。現に鹿島の指摘に、天馬以外のメンバーは驚きを隠せない様子でした。

しかしその背景を知らない観客側の視点では、上手い下手はさして問題ではありません。公演した瞬間からは「面白いかどうか」が最も大きな評価の基準となります。

その性質の違いから、役者の価値基準のみで芝居を判断してしまうと、完成した舞台がチグハグになってしまうこともあるわけです。自分達は満足行っていても、外側から見るとそうでもないといったズレを生むかもしれません。

本来はそうしたことが起きないようにコントロールする立場として監督(演出家)がいるものですが、役者の中には「自分より上手い役者の意見しか本気で受け入れない」タイプも少なくありません(※夏組のメンバーが該当するかは別)

だからこそ鹿島のような自身が経験豊富な役者でありながら、広い視野で芝居を判断してくれる者が重要なのです。

春組の時もメンバーの志に大きな影響を与えた鹿島でしたが、夏組に対して果たした役割はかなり異なっているように感じます。同様の動きにも関わらず、受ける印象が変わっているんですね。

冷静に考えると、『A3!』は春組と夏組で展開している内容に大きな違いがあるわけではありません。急造のユニットが1つの公演に向かって努力するなど、大筋は全く同じです。

キャラクターが変われば物語は変わるものです。しかし実力とモチベーションの違いで、同じようなシーンの見え方まで異なってくる。これが表現活動をモチーフにした作品ならではの面白さだなと思います。

それぞれの組が同じ目標に向かって歩む都合上、方向性の比較を行いやすいのが特徴的な作品。今回はそれが特によく見られたように思います。

舞台を続けることの難しさ

個人的に1つ押さえておきたいと思ったのが、旧夏組の映像を見ている時の現夏組の反応です。

それは「こんなに楽しそうにお芝居してるのに、皆いなくなってしまった」という感想として発露されました。

僕自身、芝居に勤しんでいた若い頃はやはり、上の世代を見て同様に感じたことを思い出します。そして、自分はそうならないように頑張って芝居をしようと考えていました。身につまされるものがある。

実際の小劇団系の現場において、30歳を過ぎて舞台演劇に勤しんでいる人たちはとても少ないです。35を迎える頃には、20代までに芝居をしていた人の9割以上がリタイアしていることでしょう。

それほどに舞台は体力と精神力を消費する分野で、それを「生活できないような給料(または赤字)」で続けられる人はほとんどいないのが現実です。実際に僕自身も一線を退き、僕の周りも"舞台"を続けている人は極わずかになってしまいました。

やっている時は楽しくてまたやりたいと思うのですが、物理的なことを考えると続けることができない。そう感じて断念する人が圧倒的大多数の世界。どんなに長い年月を積み重ねて技術がある役者でも、その壁の前に屈してしまえば「いなくなってしまう」のです。

まだ演技を始めたばかりの若い彼らは、それを実感できないのは当たり前です。「楽しいんだから続ければいいのに」と、無垢に感じられるからこそ"若い輝き"を放つことができる。それが羨ましくもあり、微笑ましくもあります。

そしてこの内容が拾われたということは、今後の展開でそういった「大人になること」と演劇の向き合い方がフィーチャーされることを示唆しているのではないかと感じます。

僕自身がその過去の積み重ねをこれからの人生にどう活かすか、それを探求している最中であり興味が湧いてくる部分です。

『A3!』らしい希望を感じられる展開と折り合いの付け方を見せてもらえたら嬉しいですね。期待しています。

三好一成の決心

10話の物語で最注目すべきキャラクターは、言うまでもなく三好一成その人でしょう。

軽快でチャラいコミュ力のオバケ。周りのことをよく考えて行動できる人間です。その実、あまりにもキャラが徹底されすぎていることから「あえてそうしている」のではと感じる場面も多いキャラでした。

過去の感想で「コミュ力オバケすぎて逆にコミュ障」と記載したのはその裏側を読み取ってことでしたが、今回でその予想は間違っていなかったことが分かりました。

勉強に勤しみすぎて孤立していた過去をコンプレックスに持つ彼は、友人が自分から離れて行くことを極度に恐れている少年でした。そのせいで誰に対しても当たり障りない回答をする癖が付いてしまっていたのです。

それは誰もにとって都合の良い相手かもしれません。しかし、だからこそ誰かの特別になることはできない選択です。それがまた彼の新しいコンプレックスになっていたのかもしれません。

相手を尊重することと、相手に全てを任せることは違います。合わせてばかりということは、誰かに決定権とその責任を押し付けることに他なりません。

どんなに不快ではない人間だったとしても、そんな相手のことを特別な存在だと思えるでしょうか。そして特別な存在だと思いたい相手がそんなことを繰り返すようだったら、腹を立てるのは当たり前のことではないでしょうか。

天馬は三好を大切だと思っている(思いたい)からこそ、声を荒げて厳しく叱責したのだと思います。

議論の場において自分の意見を主張しない者は、一旦いないものとして考えた方が楽で確実です。それにあえて発破をかけたことからも、天馬の想いの強さを感じられます。

三好もその天馬の想いを受け取っているからこそ、新たな一歩を踏み出そうと思えたはずです。

背景は分かりませんが、彼のようなタイプに真面目に意見する人は稀(言う方が悪者にされがちなので)で、それだけの熱意を受けたこと自体あまり経験がないと考えられます。

総じて天馬の一言は、彼にとってとても大きな意味を持つものだった。そうに違いありません。

演劇がもたらした変化

演劇という文化は皆で1つの演目を密に創り上げる都合上、「今までの人生で避けて通ってきた自分の弱点」と向き合わざるを得ない瞬間がとても多いです。特に人間関係にまつわる部分では尚更のことでしょう。

それは時として大きなトラブルとなったり、取り返しのつかない軋轢を生んでしまうことも多々あるもの。けれどそれを乗り越えた時は、他の機会ではなかなか得られない強固な絆を結べる文化でもあります。

演技・芝居は人の感情と感情の交流によって創られるもの。それに臨む役者同士もまた、感情と感情の交流を避けて良いものは創れません。

その中で夏組のメンバーは己に打ち勝ち、より関係を深めることを選びました。三好にとってそれは、人生にとって初めての「密なやり取り」となったのだと思います。演劇を始めたからこそ、彼はこの貴重な場に巡り合うことができたのです。

元々が周りの感情や心を読み取ることに長ける上に、それをデザインなどの"形"としてアウトプットできる彼です。意識の変化はリアルの人間関係はもちろん、芝居の思いきりにも大きな影響を与えることだろうと推察します。

振り切った三好一成が、来週以降に見せてくれる新たな顔に期待します。

今回活躍したキャラクター達

では残りのキャラについて今回も1人ずつ紐解いて行きましょう。

皇天馬

鹿島から痛烈な言葉を浴びせられるも、しっかりと駄目出しを受け止めて改善に向かうストイックさを披露。

元々コメディと自分のスタイルが合っていないことには自覚があったわけですし、MANKAIカンパニーには何か目的があって入ったと考えられます。彼の芝居に対する真面目さを考えれば、「意外ではない」と言って良いと思います。よりそのイメージが強固になった形でしょう。

また今回は三好に発破をかける役にも回りましたが、ここでもしっかりとした論理性を見せてくれました。

「写真にこだわった」という事実を元に、三好は何も考えていない人間なのではなく「考えているのに意見を言っていない」のだと判断したのです。闇雲に感情をぶつけたのではなく、それをする意味のある相手だと感じたからこそ声を荒げました。

人によっては「そこまでする意味があるのか」と苦言を呈す行動ではあるものの、そのリスクを犯すからこそ発展する関係性も多くあります。何よりこれは相手のことを信頼しているし、その気持ちに応えてほしいと考えるからこそできることです。

競い合いぶつかり合い、傷付け合いながら人は成長します。それを避けることで安寧を享受することができるとしても、挑まなければそこ止まりなのです。そしてその中で、できる限りいざこざを少なくする努力をすることはできます。

結果的にですが、今回の天馬は成功と取れる結果を導きました。合宿を経てより人間的に成長した天馬だからこそ、そのバランスを詰めることができたのではないかと思います。

よりリーダーとしての風格が強くなってきた。そう感じさせられますね。

瑠璃川幸

稽古の後に衣装を仕立て上げる頑張り屋さん。
態度や振る舞いは何かと気だるそうな幸ですが、実は何事にも一生懸命になれるところがありますね。

口も態度も悪く特定の人間とぶつかることも多い割に、全体の空気が悪くなることには否定的です。男の子っぽい性格で求めているものには女性的なところがある面も含め、見えている部分と実際に抱えている心や感覚が対極的なものであるのが彼の個性だと思います。

天馬の三好に対する態度に疑問を持ちながらも、一方的に否定することなく「考えを確認する」ことができるようになりました。これは天馬の変化に対応した幸の変化でもあり、目上として天馬をリスペクトできる範囲が拡がっているのだなと感じました。

役者としても鹿島に「アリババと釣り合ってない」と言われるなど、無茶がすぎる難題を押し付けられた形。否応なく天馬を意識する時間は長くなっているでしょう。それがキャラクターとしての瑠璃川幸の発展を感じさせてくれるのです。

天馬のキャラ変化に紐付けられて、幸のキャラ理解も深まっていく。関係性が生み出す妙を感じる瞬間は、いつだって心地の良いものです。

向坂椋

全体的に器用な役者が多い夏組の中にいるので、ズブの初心者というステータスがより重くのしかかってしまうのが不憫でならない。

ライバル劇団?ポジのGOD座代表 神木坂レニがチラシを破いた真意を読み取るなど、細かい感情の機微に気が付くタイプなのだろうと思います。少女漫画を愛読していることも影響にしているのかもしれません。

ケガをして引退した部活動のメンバーにチケットを買ってもらえるなど人間的な信望も厚く、情緒的な点については夏組の誰よりも多岐に渡って感じ取れる才能があるように見受けられます。

その長所がお芝居に活かせる日が来ると良いのですが。今回のアニメでそれが見られるかは、残り話数的に微妙になってきてしまったかも。果たして。

斑鳩三角

近道~△(マリオ並感)

その演技力は鹿島にも認められるほど。基本的に駄目出しをしに来たはずの鹿島が指摘を言いよどんで「悪くねぇが」と言うのは、それほどに「悪いところがない」ことの裏返しであると思います。

対して今回も人間的な面は分からず終いで。ここまで来て謎多きキャラは謎が多いまま、なかなかコメントをできないのが歯痒いところ。

物語の味付け以上の活躍があと2話で見られるのか、ですね。

おわりに

10話は三好一成を中心に、演劇の深みにまた1つ踏み込んで行く物語でした。

今回は1話に詰め込まれた情報や要素がかなり多く、特に重要だと思われるところを中心に執筆しました。次回以降に回せそうな部分については、大きく取り上げられた時に合わせて触れて行こうと思います。

ラストでは天馬に関わる重大な設定が公開され、波乱の展開となった夏組。残す2話でどのキャラがどの程度まで掘り下げられるのかが分からなくなってきましたね。

始まったばかりの劇団の演劇と、プロの役者という重責の中での戦いを余儀なくされた天馬。それに伴った他のキャラクターの感情と価値観の動きに注目して行きたいです。

それでは今回はこの辺りで。また来週お会い致しましょう。

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