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キンプリオタクの『A3!』ミリしら感想 第5話 技術と精神 人の心を動かす芝居の在り処

投稿日:2020年5月12日 更新日:

第5話です!
3話で1つになったと思いきや、4話でまた大きくすれ違った春組のメンバー達。しかしぶつかり合うことで分かり合い、前に進むこともできる。そんな希望を持って終わった前回でした。

5話ではそこからのさらなる発展が描かれていきます。彼らが最高の初公演を迎えるために必要な過程が描かれた大事な1話となりました。

今回もしっかり見させて頂きます。よろしければお付き合いください。

全員が一丸となって前に進む

この5話で春組のメンバーは、演劇に向き合う方向性が大きく変わり始めたと感じました。

4話までは「初公演を成功させる」という共通の目標の中で、それぞれが個人的に努力を重ねて前に進んでいるというイメージでした。それが今回では、全員が一丸となってその目標に向かっていく意識が高まったように見えました。

開幕から自分は自分、他人は他人のスタンスで稽古に励んでいた真澄が、咲也を指導するところからスタート。咲也の告白を聞いたことで、できないメンバーを置いていくのではなく、一緒にできるところまで引っ張り上げる意識が芽生えたようです。

しかも動きの教え方も的確で、実は指導者的な才覚も持ち合わせていました。咲也にとって呼吸を合わせるべき相手が自分のことを理解し、教え導いてくれるのは最良の状況。この行動が彼らの殺陣のクオリティをグッと向上させたのは間違いありません。

その他のメンバーも全体に対するフォローを入れる・自発的に動くといったシーンが非常に多く、総じて彼らが想いを共有していることが明確に提示された一回でした。

全員が揃って相談や歓談しているシーンも過去4話に比べて多くなり、全体を通して「春組の物語である」ことが過去数話に比べて分かりやすく伝わってくる内容だったと思います。

役者 碓氷真澄の苦悩

その中で今回特に活躍したのはやはり碓氷真澄くん。
咲也とのコンビネーションはもちろんのこと、ストリートアクトを始めるなど積極的に前に出るところがよく見られるようになりました。

一方で「家族を捨てられない」という台詞に気持ちが込められないなど、役者としても初めて大きな壁にぶち当たることに。

彼は何でも卒なくこなすことができる才能の持ち主ですが、過去の記事でも書いたように自分の枠の中で芝居を完結させてしまうきらいがあります。どちらかと言うと感情的に演技するのではなく、技術的なアプローチで演技を行うタイプです。

これは物理的には練習することなく感覚で捉えられるにも関わらず、体現される"芝居"自体は感情的ではなく技術的なものであるということです。

この本来はあまり起きない矛盾が起きるのが"演技"並びに表現のの難しさの1つだと思います。そしてそれこそが「お前のは芝居は詰まらない」と言われてしまった原因でしょう。

つまり真澄は自分の枠の中でやるべきことを捉えられるが故に、自分以外の感情を処理することが苦手なのです。だから自分と異なった想いを持つ役柄の気持ちを理解できず、理解できないから体現できない。そのジレンマにハマってしまったのがこの5話でした。

元々演技のセンスがない人の場合、技術ではなくキャラを取り込むことで芝居のクオリティを上げるタイプに傾く傾向があり、そんないわゆる憑依型の役者は技術的に優れていなくても時として他人の心を動かす芝居ができます。ただしこのタイプは技術的な成長が見られずに埋没してしまい、上手な役者になれないことも多いです。

逆に真澄のようなタイプは、多くの人から「上手だ」と言われる役者になる可能性は高いですが、ある一定のレベルまで行くと「安定はしているがそれだけ」で終わることも少なくありません。

その彼に「好きな芝居の役者ならどうするか」を考えさせるといういづみの采配。これもまた的を射ています。

一般的に考えると、誰かの真似をすることは演劇の本質から離れていると思いがちです。自分なりの表現をしてこそ表現者であるからです。しかし自分の頭と感覚で演技を処理するタイプの場合、自分と異なった人のコピーをすることは殻を破るキッカケになることもあります。

「自分ではない誰かなら、違った方法でこのキャラを演じるだろう」そう考えることが、最終的に自分とは違うキャラになり切るためのヒントになったりするのです。

立花いづみのアドバイス

そして今回で彼が参考にした芝居は、そのアドバイスをした「いづみ本人のもの」というのがにくい演出でした。

彼女は役者としては大根で一切の才能がないキャラクターとして描かれていますが、芝居が大好きで一生懸命演じることが魅力的な女性です。その点ではいづみと真澄とは真反対にいる役者であり、彼が憧れて参考にする相手としては打って付けでもありました。

前述の通り、技術的に物足らない芝居でも、他人の心を動かすことはある。多くの人に笑われてしまう演技力でも、特定の誰かにとっては輝いて見えることもある。ステージの上で輝こうとしている人間には、等しくその賞賛を受ける可能性と機会があるのが舞台演劇の面白いところでしょう。

そもそも真澄が演劇に興味を持てたのが、最初に彼女が見せたストリートアクトのおかげだった。真澄が彼女に惚れたのもその演技があったから。さらにそれがまた役者としての立花いづみさえも救ってさえいる。

今現在、監督としてMANKAIカンパニーを指揮する立場にある彼女は、指導者としてのノウハウを買われながらも役者としての成功体験が皆無の女性でした。人の上に立つのに、人より劣った技術しか持たない。そのコンプレックスを乗り越えるのは非常に難しいと言えます。ですがそれができなければ優れた指導者にはなり得ません。

その彼女にとって「あなたの芝居が好きでした」がどれほど価値のある言葉だったことでしょうか。それは彼女の1つの自信となり、転じて監督として劇団を支える大きな礎となったはず。

立花いづみのアドバイスによって成長した碓氷真澄が、そのアドバイスによって立花いづみを救い出す。

全てが巡り巡って良い方向へ。
演劇を中心に育まれる人間関係として非常に分かりやすく、希望に満ち溢れた物語だと感じました。

今回活躍したキャラクター達

では今回も1人ずつ春組のメンバー+αについて語って行きましょう。

佐久間咲也

「謝れば良いんだよ!叩いてごめんなさいって」あまりに面白い台詞。

事情を100%理解しているわけではないとは言え、その純粋さはちょっとどうかと思う。本当に一緒に謝りに行くのも含めて年頃の学生感が出ている。あとどうでもいいが、全体通して盗み聞きが横行しているのは良くないと思います。

ストーリー的には前回が当番回だったため、今回は個人的な活躍は控えめといったところ。その分、今回は上記のような彼らしさと言うか、純粋でまっすぐなところがよく見えたと思います。

キャラとしてはオーソドックスなセンター属性で取っ付きやすく癖のない男の子ですが、演劇というジャンルの複雑さの中でその純粋さが"味"となっているように思います。

彼自身がその中でどう成長して、役者としてもキャラとしても「佐久間咲也」を確立して行くかが、このアニメの醍醐味の1つではないかなと。今後も彼の変化には注目して行きたいですね。

碓氷真澄

お当番回で上項でも語っているのですが、全体的に行動が面白すぎるためこの項でも登場。手違いで監督の頬をひっぱたいてしまい「失恋した」とトンチンカンなことを言い出した時点でもう駄目だった。好き。

監督を叩いてしまったことについて「どうしよう」とか「謝る」とか考える前に、それらを全て含めた感情として「失恋した」が出てくるのがポイントで、流石は演技未経験からあらゆることを卒なくこなせる表現力の持ち主だと言わざるを得ません。

しかもメンバー全員にいづみに好意を寄せていることがモロバレ(恐らく本人にも気付かれている)となると、もはやそれは告白しているのと同義なのでは?と思ってしまうところがあります。

この手の作品で主人公に1キャラが明確すぎる行為を寄せており、それを別に誰も何とも思っていない(嫉妬などがない)という状況がかなり特殊なため「これは今度どうなる?」と思わせられる部分です。

今回で彼も家族絡みの問題を抱えていることが判明。またルックスの良さから興味のない女性に言い寄られ、そのせいで自分の本当に好きな人が貶められるところを目の当たりにしてしまったりと、割と好意の所在が迷走していたり、人間不信傾向が強いキャラなのかもしれないと思いました。

クール・ダウナー系のキャラにしては持っている要素が混線していて、それが喧嘩せずにしっかり魅力として体現されている彼。キャラとしては今のところお気に入りです。頑張ってほしい。

皆木綴

今回もサブに回った少年。
脚本を書き終えた時点で前半の見せ場が1つ終わっているので、次回までがちょっと長め?

全体での活躍として、旧知の仲である三好一成にフライヤーとサイトデザインの依頼をしてくれました。さほど仲の良くない相手(自称)にこの手の仕事を頼むのは気が引ける面もあると思いますが、その中で劇団のためを思って行動してくれたのは事実でしょう。

大家族を抱えるキャラクターで、家族がテーマになりそうな春組の中では今のところ最も幸せそうな家族を抱える彼。それはそれで苦悩があるのではないかと思いますし、その辺りが開示されてからがキャラクターとしての彼の本番かなと思っています。

三好一成

誰よりも役者っぽい役者じゃない人。
きっと今後どこかで活躍することになるキャラクターなのだろう。

衣装担当の瑠璃川くんなど前回と今回で少しずつ出番のあるキャラが登場していて、彼らもまたメインキャラなのだろうとは思います。今回は春組の物語ですので、またの機会に…。

シトロン

彼の誤変換より使っているPCに問題がある問題。

今回は至と会話するシーンが気持ち多かったと思いますが、全体的に彼は特定の誰かと行動する感じではなく、かと言ってソロで活動するキャラでもない。状況に応じて均等に色々なキャラとやり取りして、物語の空気感を整える役割を果たしています。

なので彼自身に目立った活躍はないものの、基本的には毎回どこかで印象に残る活躍をしてくれるキャラクター。

テレビに顔を出せない(理由があると推察)なども含め、今のところ最も謎の多いキャラでもありますが、裏があるようには見えないので安心して見られるのは変わりなく。彼のおかげで物語が粗なく展開できている節は大きく、色んな意味で春組を繋いでくれているキャラだと思っています。

茅ヶ崎至

ネット強者。ただのゲーマーではなかった。

前回までに比べると積極的に劇団に貢献しようという意志が強まったように見え、引き留められたから仕方なく…ではなく、「決めたからにはちゃんとやる」という行動指針を立てているように思えます(※ただしゲームは最優先)

大人として一歩引いたところからアドバイスする姿が印象的で、テレビに出演しても全く動じません。これは元々持っている人間性によるものなのか、社会人として自身を演出できるスキルを持っているからなのか気になるところ。

他のメンバーに比べて演劇に対する熱意が低めなのはネックにはなり得ます。しかしそのおかげで気負わない行動ができたり、他の人間にはない切り口の意見や提案が出せるところは組織として有益です。

結果として劇団に対するスタッフ的な貢献度は大分高めである印象ですが、やはりまだ役者としての側面が一切語られていないところが気がかり。

それが語られることと、彼が春組に本当の意味で参加することには何かしらの繋がりがあるのかなと思いながら見ています。

松川伊助

あなたは33番目のお客様です。
満開って良い言葉ですね~。

BGMを流してしまうところに"マジモン"感がある。一生懸命なのは伝わるものの、MANKAIカンパニーが倒産しかかったのは彼のセンスにも多大な問題がありそう。

センスがある者が周りにいてこそ彼の一生懸命さは武器になると思うので、是非ここから挽回してほしい(超絶フォロー)

おわりに

5話は初公演に向けた大事な過程が描かれた一話。
シリアスな部分とコミカルな部分のバランスが良く、展開も滑らか。個人的には過去5話の中で最もこの作品の魅力をたくさん感じられた回だったと思いました。

いよいよ次回は彼らの「ロミオとジュリアス」の幕開け。
この公演がどのような結果に終わるかで、今後のこの作品を視聴する方向性が大きく変化するなと思います。

良い方向には向かいながらも、まだまだ抱える問題も複数残っている春組の面々。それをどう処理するのかを楽しみにみさせて頂きます。次回の感想をお待ち下さいませ。それでは。

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