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キンプリオタクの『A3!』ミリしら感想 第1話 理想と現実 舞台演劇に潜む矛盾と戦う物語

投稿日:2020年1月14日 更新日:

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こういう者です。

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大好きな『キンプリ』で熱意の籠った感想記事が評価され、続いて監督繋がりで始めた『あんスタ』のミリしら感想記事では「読解力のオバケ」などと評されながら、2019年コツコツと歩んできました。

2020年もこの流れを続けようということで、今までの読者さん達にも楽しんで頂けそうな作品の感想記事をチョイス!

弊ブログの「超読解シリーズ」第三弾!
『A3!』のミリしら感想、始めます!

本当に右も左も分からない作品ですが、原作ファンの方にも楽しんで頂ける記事になるよう、努めて執筆して参ります。お付き合い頂けましたら幸いです。

それでは早速したためて参りましょう!

演劇に特化した群像物語

今回は第1話ということで、まずは作品全体の質感や雰囲気をしっかりと押さえて行こうと思います。

『A3!』は女性向け作品としてリリースされた男性キャラ中心のアプリで、役者を取り扱った作品であるということはチェックしていました。リリースからもうすぐ3周年になるようですね。

この手の作品ですとやはりアイドル物がメジャー。アイドルであれば歌ダンスはもちろん、演技要素も自然に取り入れることができ、その万能性は言うまでもなく明らかというところでしょう。

その中で本作は役者…しかも舞台演劇というかなり狭い部分に限定して展開している、というのが唯一性であり長所でしょうか。

舞台演劇は部活等で学生時代に経験している人も少なくないジャンルであり、アイドルに比べて親近感が湧きやすいのが魅力です。

さらに現実でさえ人間関係面の問題が発生しやすく、その状況も多岐に渡ります。その傾向から、フィクションの世界でもリアリティを尊重しつつ、物語に幅を持たせることができそうです。

『A3!』は現在高いシェア率を誇る女性向けコンテンツの中では比較的新しい作品に当たり、過去のヒット作を参考にスタートしたと推察されます。

昨今では女性向けと言っても乙女向け要素ばかりではなく、群像要素の強い作品に熱狂的なファンが集まりやすいのは明らか。そのような時世から、演劇というジャンルに尖らせた作品展開が成功すると判断されたのも頷けます。

僕自身、かつて役者として舞台に立ちプロを目指していた過去があり、現在でも脚本やこういった記事群の執筆に当たる立場にある男性であることから、強い実感を持って語れる作品になると思います。楽しみですね。

The show must go on.
それでは作品の内容に触れて行きましょう。

全体的な世界観

舞台演劇を軸に取り扱った作品。
世界観は現実味のある一般的な日本のようですが、舞台演劇というジャンルが大衆に広く受け入れられているようです。現実においての演劇は今やアングラなエンターテインメントですが、さながらTVや映画を観るような感覚で演劇が根付いている世界といったところでしょうか。

それを象徴するのが「ストリートアクト」と呼ばれる野外演劇の存在。やはりストリート系はこちらの世界でも人気のようですね。GOD座。すごい名前だ。

現実でも全くないとは言えない光景ですが、人生で一度も見かけないことの方が多いだろう催し。どちらかと言えば不審者気味の行動も、この世界では人だかりができるほどのエンタメとして成立しています。

また序盤ではセンターポジの佐久間くんが河原で練習をしていますが、通行人の反応などからも舞台演劇の練習が珍しくないものであることが伺えます。路上オーディションも斬新な試みです。

事前準備やスタッフの動きなどがかなり簡略化されていて、昨日入った団員の公演が次の日だったり、小屋入りが開演の30分前だったりとかなり無茶な動きが散見されますが、これはアイドルもので新曲の歌唱を2秒で遂行できるアイドル達と同じような文化だと解釈しています。

こういった切り口の新しい作品だと、どこまでの設定が「そういうもの」でどこからが「意味のある描写」なのかの判断に少し頭を使いますね。例えば舞台演劇が活発なので、首尾よく動けるシステムやノウハウが現実より完成している…と取ることもできますので。

"演劇"と真摯に向き合う作風

しかしながら舞台演劇という活動については、どこか退廃的な空気感や残酷な実力主義の部分について、現実的な色味が踏襲されています。

演技という行動、役者という生き物には様々な形式ありますが、中でも舞台演劇は最も閉鎖的で煮詰まった文化であると言えます。誰でもできるし誰でも入れるけれど、その分誰もが大きな苦労を強いられる。

通常であれば舞台演劇は数ヶ月~半年の稽古と準備期間を経て行うものなので、それだけ当事者間には密接な関係性が求められます。舞台を1本踏めば多くの人と仲良くなりますし、そこから一生の友やパートナーを得ることも少なくありません。

逆に、その過程で感覚やモチベーションの違いから軋轢が生まれることも相応に多く、人生最大の決別を経験することが多い文化でもあります。

1話にして佐久間の舞台演劇に懸ける想いの強さや主人公の立花いづみの過去の経験などから、演劇を取り巻く内部事情について真摯に向き合って行く作品だということが示唆されています。

アニメ的な誇張はありながらも、1つの演劇ものとして文脈を理解したり感情移入をしたりすることも視野に入れた楽しみ方ができそうだなと思いました。

演劇を取り巻く矛盾との戦い

一方で1話の物語で悪役ポジに座っていた古市左京は、演劇の外側を理解するリアリスト。

現実における演劇は基本的にお金を儲けるのが難しい文化圏で、やればやるほど赤字ということも少なくありません。劇団が成長して大きい小屋を借りればレンタル料だけでも膨大、その小屋を活かし切れる人も装置も必要で、なおかつその小屋を管理できる技量を持ったスタッフの準備など、出て行くお金の方が増えて行きます。

今回舞台となる「MANKAIカンパニー」は、自前の小屋を手に入れられるほどに安定した運営と経営が可能な劇団だったようですが、当然相応の維持費がかかります。それが払えなくなれば全てが瓦解してしまうのは自明です。

演劇の難しいところは、構成員たる役者があくまでも個人力に依存した存在であること。「舞台役者のプロ」と呼べる人はあまり存在せず、かなりふんわりとした立ち位置の人間がスターとして扱われていることもしばしばあると思います。

ですから、その結び付きは実力と条件に酷く依存します。歴が長くクオリティの高い劇団であればそれだけ質の高い役者やスタッフを揃えられますが、その内容に綻びができた時、簡単に人は離れて行きます。

大きな劇団だったはずの「MANKAIカンパニー」が跡形もなく寂れてしまったのも決して荒唐無稽な状況ではありません。むしろ大きな劇団ほどそういった憂き目に遭いやすいのが演劇だと思います。

どこかで持ち小屋に見切りを付けて縮小運営を心掛ければ、団員0名という結果はなかったかもしれません。しかしそれをギリギリまで手放さなかったのが支配人のエゴであり、この作品の根幹に据えられた大切な要素の1つなのでしょう。

古市は決して事情を知らない立場ではなさそうですし、彼も演劇に携わる人間なのは間違いないでしょう。それでいてしっかりとお金のことや運営のことに目を向けられる、稀有な人材です。舞台人は表現者たる意識が強すぎる曲者揃いで、だいたいそれ以外のことがガバガバですからね。

展開的に古市は悪役に見えますが、やることやらなきゃ駄目なもんは駄目。残酷だとは言えるものの、おかしなことではありません。

表現とビジネスは二律背反。
決して交わることのない平行線ですが、それを少しでも近付けて同じところに寄せて行くのがエンターテインメント。

プロとアマチュア。お金と熱意。理性と感情に現実と理想。そういった"演劇"という世界を取り巻く矛盾と戦いながら、彼らが輝いて行く物語。第1話段階では、それがこの作品の本質だと受け取りました。

メインキャラクター達の所感

ではまだ1話の段階ではありますが、キャラクターについても少しだけ触れておきましょう。

先月まで感想を書いていた某何とかスターズは1話から引くほど沢山のキャラが登場していたのでてんやわんやでしたが、こちらはある程度キャラ数を絞って1本の物語を描いてくれたので、比較的見やすい仕上がりに。いやこれが普通だったか…。

天真爛漫で声がデカい佐久間は、キャラとしてはオーソドックス舞台役者然とした少年。初舞台でとりあえず声がデカい棒読みというあるあるを見せてくれて微笑ましい。声がデカいのはそれだけで武器なので良いと思います。

特別なことはない"よくいる"センターキャラではありますが、明るくキラキラしたことがそれだけで絶対的な武器となるアイドルと違い、「役者」という世界では彼のような人間を猪突猛進型と悪く言うこともできます。

ステージ上の親和性が重要な舞台演劇では、持ち味のコントロールが必要です。その辺りの立ち回りで、彼らしい個性を見せてくれることに期待します。

個人的に注目したいのが碓氷真澄くん。
主人公のいづみに問答無用で一目惚れし、なんかよく分からないことになっている斬新なキャラクター。

クールダウナー系なのに恋愛感情に実直で犬っぽい性格。感情が読み辛く、対応に困りまくってしまうタイプ。1話から確かな存在感を醸し出してくれました。いづみとのやり取りなど、今後の挙動と発言に注目が集まります。

皆木綴くんは劇作家志望で役者も兼任することに。個人的にちょっと親近感が湧きますね。

GOD座の人に「経験者?」と問われ「経験はあまりないですけど、もし寮とかあれば!」というあまりにも前のめりでぶっ飛んだやり取りを見せてくれたり、「訳アリの"訳"がシビアすぎる…」という一般人代表っぽい名言を残してくれたり、独特な会話センスは劇作家志望らしいと言えます(好意的解釈)

彼らがこのアニメの主要人物と言えると考えています。支配人など周りのキャラクター含め、2話以降でどんな姿を見せてくれるのかが楽しみです。

立花いづみは主人公力強め

主人公の立花いづみは、しっかりと台詞とポジションを持った確立されたキャラクター。

父親がかつて「MANKAIカンパニー」を取り仕切っていた人物であること、自身に全く演技の才能がなく仲間外れにされた過去を持つなど、かなり強めの主人公力を持っていて、周りに与える影響力もかなり大きいキャラクターに。

『あんスタ』はアニメ化にあたり主人公の存在をどう扱うに相当な気回しがありましたが、『A3!』はアニメ化に合わせてしっかり彼女をキャラ立ちさせるタイプの作品。そういった観点での見え方の違いも楽しめればとも思っています。

支配人である松川伊助や古市など、彼女の父親と過去に関わりを持っていた人物が既に数多く登場するため、彼らの物語にはいづみが必ず関与すると思われます。転じて「MANKAIカンパニー」の物語その物について彼女の存在が重要になってくるでしょう。

物語終盤では総監督に強制的に任命されるなど、どちらかと言えば彼女を中心とした物語が展開されて行きそうな雰囲気を感じます。

人前に立つ才能がない者が、強い"見る目"を持っている、指示出しやまとめ役に優れるということはよくあること。名演出家ほど役者としてはポンコツだったという話を耳にする機会も多く、演劇の世界ではこの辺りは取り分け区別して考えられます。考えるべきです。

彼女のような役者として苦い思い出がある人物が、導く者として大きな成果を上げる姿が見られるのも、きっと演劇を扱った作品の醍醐味の1つ。

プロデューサーやマネージャーという絶対的な垣根ではなく、演目の内に入ろうと思えば入れる人物があえて外側に立って彼らを先導する。この微妙な差が、他の作品にはない持ち味かもしれません。

今後とも主人公たる彼女の活躍に大いに期待します。

おわりに

とりあえず1話はこんな感じでしょうか。
今後は物語やキャラに沿った読み解きを中心に執筆して行きます。どんな感じの記事を書いていたか知りたい方は、過去の作品の記事をチラッと見てみてくださいね。

舞台演劇をモチーフにした作品なので、色々と込み上げてくるものがありますね。僕は声優志望だったので舞台演劇の経験が滅茶苦茶豊富というわけではないですが、それでも共感できるところは多いです。

期間の長短はありますが、稽古場を押さえて日夜練習したり稽古に励んだり。根詰めたものを吐き出して迎えるあの瞬間には得も言われぬ快感があります。

舞台には色々な悪魔が住んでいますが、あの快感とアドレナリンが分泌される高揚感は本当にあの場でしか体験できないもので、十二分に人を狂わせる力がある。

そういった悪魔と戦いながら、現実と理想の狭間を各キャラが突き詰めて行く爽快な物語が描かれると信じて、この作品を追って行こうと思います。

まずは1クール(だったと思う)是非ともお付き合いよろしくお願い致します。

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